FC2ブログ

やる夫まとめ劇場(仮)

自分が面白いと感じたやる夫系スレをまとめるサイトです。長編を多めにまとめていきたいと考えていますので、時間がある人はどうぞ。
スポンサーサイト

やる夫で学ぶ柳生一族 その24「柳生但馬守宗矩の巻」 後編

297やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:02:34 ID:wK+ZuHSZ
                                      _
                                    /-‐-\
                                   ノ ,=u=、ヽ、        __人__人__人__
                         /~ト=.   //      \\      )         (
                        /ヽ_ノノ三  〈 ,/ o二〔咒〕二o `、 〉   )  場 終  (
                      , く   _/三.__   \_ト、_______,.イ_/    )  .合 わ  (
                     /   ./三./ ノ }三 ハ|テ◎」レェェラレ.、      )   .か っ  (
    ぐはあっ!?         ./、__ /=/`ー' /三..ヾ〈   「|_|〉   〉ソ     )  | と  (
           / ̄ ̄ ̄\   /   ,/丶 /三三三. |  l'ニミ!  |'l      ).  ッ る  (
 (● )o    /_ノ  ヽ ヽノ   /  /ヽ、 /三三三. - .」\`==-'/i|       )       (
      ゚   _)_) (◎) /   /,/ _,∠ -┬―‐┬┬‐=="'' ‐<..,,_|_|"'''‐-、  ⌒Y⌒Y⌒Y⌒
         | (_人/⌒ } ノ-:「  ;:'''       !   :! L..ノノ三- 、_  ハ.  iヘヽ、
     。  o 。/ (   }、 /|:! ,!   ::::-=二王 ̄三 ̄ ̄        `'′入oヽ ´‐\
         | (__ン   jr |:|:! | i'''"""    !  ̄ !丁 ヽ三.  ト、 ̄o ̄]ニヽ ヽ'''""ヽ
         |       ヾ| ! ! ,|   ,;:::-┬―――三'三.   |  ̄ ̄ lニヽoヽ__,,,...`、
       .  ヽ      /  || !| |    ::::  l三|=  |三.      |     ノ_,ヽ. ヽ_,,,.|
          ヽ    く   ヽ|l,l|l___;;;;;__ノ三!=  /三三      ̄ ̄_,,.. -ヽ. ヽ
        γ⌒´     ⌒\  ̄ ̄::::三三/= /三三三    """ ̄
                                   伊達政宗



301やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:04:34 ID:wK+ZuHSZ
     ゞ'""゙゙ ̄`i' ̄ ̄ ̄``````````````''シ
      ヾヾ    ii|  ,.彡          /
        ヾヾ   iiレ'彡彡.....       /
       ヾE二i,二.ji_ri==r `ヾ彡    /
        E_/>'三7/,__,,... iミ.   /
        r^ヽ>{i_ 〃ラ_,....__;´ {ミへ /   なんだなんだ、随分と弱っておるようではないか。
        ロ  ||==o'´┴゚'-`; └' h }  どうしたのだ、”天下一の武芸者”ともあろうものが?
        ヽ_〃 l ;;  ~~ ̄` ;   、_'_ノ  
          |  | .;;        ;   |:|
          | `=='''    、 ;   |:|
          .l `r====ィ`    |:: |
         ヽ. ヒ二二.ソ   /::: |
             ヽ` ー--‐  _ィー―┴r―
           ____,.>-;;;  -'"/ヽ-‐' ̄ /
          ∧ ;; ;;;;;;; | :::::: /ヽ  ,.-‐' ̄
         / ヽ ;;;;;;;; | ::::::/;;;;;;; ̄


       / ̄ ̄\
     / _ノi||i\ \
     | (●) (●) |    伊達様。
.     |  (__人__)   |   そのようなお戯れは勘弁してくだされ。
      | u `⌒´    |
.      |        }    武芸の腕など多少立ったところで、
.      ヽ       }    病の前には手も足も出ませぬ。
       ヽ     ノ    病には打つべき体などないのですから。
       /     }
       .n:n    nn
      nf|||    | | |^!n
      f|.| | ∩  ∩|..| |.|
      |: ::  ! }  {! ::: :|
      ヽ  ,イ   ヽ  :イ



302やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:05:56 ID:wK+ZuHSZ
    ./ ̄ ̄\
   ./    /i||i\   
   |    ( ⌒)(⌒)  
   | u.  ||i (__人__)    とはいえ、良い気付けになり申した。
   |   u. / ̄)ノ    ありがとうござりまする。
   |   / / }   
   ヽ _/ /  }   
  /  /  .'´ヽ   .
           ヽ⌒)

     .___
   ./ ノヽ\
    ;| (○)(○|:
   :|ヽ (_人_)/;    それでは、拙者はこれにて…。
.   :| |. ⌒ .|;
    :h   /;
     :|  /; ’
    / く、    
   ;| \\_   
   ;|ミ |`ー=っ



304やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:07:29 ID:wK+ZuHSZ
    ,.-─ …‐-、 _
   く  ,.ィ彡__   \ ̄¨ ー- ..___    _,,. -、
    V ノ   \  \         ̄ ̄    _}  
.      \  ____\  \           ,. </  
      ヽ´oヽ   `>‐--丶、 _   _,.イ\ /   
          \>/ ト、jノ<二二..__ ̄ `ヽ  |     
         |::::::::::/`ヽ彡   -‐   ̄二ニ =ヘ、     ンーッ!?
           ;:::::::;:',ィフ=、ー-r‐'  彡'⌒ヽ__,.   ヽ    結局またしぼんできておるではないか!
        /:::/// , =ァ''   \ニ/ /¨ヽi  `ヽ   '.   イカンな、あんなことでは!
        //::l U ,fュ/      i `'  i'^ソ/`ヽ     i 
..      レ/ `ヽ/ ソ     /    i_/\     l    …ふむ!
   .       ,'  _i.,,_           l   丶、   i   ひとつこの政宗が世話でも焼いてみるかァー!!
          i  __}             !     `ミ、W 
            └‐´r' __          |      ヽ 
              ,.-┴r'_‐ノ          l
         _⊥、 \'       /
.           {   \' _}    ,. <
.          /\   \_,.ィ
        \ \ /ヽi. 人
.           f\ ノ丶、ノ
         ヽ `>‐く
             `ー─'



306やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:09:22 ID:wK+ZuHSZ
 そして、それから少しして…

    『あの日、忠世のところに
     政宗からの手紙が届きました・・・ 』

          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
        /   /   /
        /   /   /
       /   /   /
       /   /   /
      /   /   /
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       |                    |
       |                    |
       /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
       /              /ヽ__//
     /  日本一ィィィィィッ!  /  /   /
     /              /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



308やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:11:30 ID:wK+ZuHSZ
              lヽ          /ノ
           ヽ,ヽ, - ー‐-、/、ノ    
           /        \   
           /              ヽ    
          l   _____    ____     lヽ 
        /, , ':::::::::::::', ,':::::::::::`ヽ   ヽ     …………。
      /  l l、ー- 、::::::l l:::::::, -ー ァ) , /:\        
     /ヽ  l l:::` ー ゜ソ. ヽr'_゜- ´:ノ / /::::  \      
     /:::::::::ヽ ',ヽ、;;;;;;ノ   ヽ-ー ' ノ l:::::::: ,r'゙ヽ     
   /:::::::::::::::::ヽ、`- ,,_l ___   __,,  ', -'::::::::::,r'::::::::::ヽ     
.  /:::::::::::::::::::::::::::`:二ニゝー- イ--- 、::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ   
  l::::::::::::::::::::::::::/            ` 、::::::::::::::::::::::::|  .
  l::::::::::::::::::::/                \:::::::::::::::::::l  
             酒井忠世
           (本丸筆頭年寄)



310やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:12:48 ID:wK+ZuHSZ
       lii;;,.   "!li;;、.
        ''!!l|li;;,   ''!|||li;、
        , -'"~  ̄ ̄"""''ー、.
      /           `ヽ、
     /               \
     |il|||lli:.  ,il||||||||lllii;,.  ,     \
     ===・  ======・;ll  i      `、
  ムシャ |!|||l!;,.  ''!lll||||||||l!!'  ノ  .,;;iilll|||||||lii;;、
 ムシャ ((`y''_         , ' ,;;i|||||||||||||||||l|||li;.
     ,,,ヾ ̄  ,, -‐…ー-‐'".,;;il|||||||||||||||||||||||||||li;
    (( ''jjiii;;;"T!;,.   .,,,;;;;iill||||||||||||||||||||||||||||||||||i;
    ,;ill|||||||li;''!||||ll|llil||||||||||||||||||||||||||||||||||||ll!'''""''!i;
   ;i|l|l||||||||li; !'"  "''!l||||||||||||||||||||||||||||!'"    `.
   |l|||||||||||||l   .;iil|||||||||||||||||||||||||||||!'       !
   '!l|||||||l||l!'  .,il|||||||||||||||||||||||||||||||!:       j
  i||ii災災''"  .;il||||||||||||||||||||||||||||||l!''         !
  ;i||||||||||||i ,' ,;i|||||||||||||||||||||||||||l!''"        ,'
  '!|||||||||||||i; '.,;;ii|||||||||||||||||||||ll!''"          /
  ';!||||||||||l!'i|||||||||||j||jj||||||||||||||||li;,、       /
   ゛"'''''il||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||i;,     ノ
      "''!l|||||||||||||||||||||||||||||||||||||i;,,_,,- '
         """"''''''''''''''''''''''''''"""



311やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:14:19 ID:wK+ZuHSZ
                  _,,.. ._  
              _,r;';;;;;;, _,..、`、 .          いやいや、酒井殿。
              i´_,.. - ' _゙、,ヽ         食べちゃ駄目でしょ。
              .l゙、 ,.、 '´rニ,゙v i        ええと、どれどれ…?
              ヾ iャ'j; `  i' r'~ヽ,ーュ: ;   
              ュ'ヘ ヽ ' _,  i .! .i !`ー┴-ニ`y、 
            .r'´;l´::.:..ヽ, '´.  / ! .l, :::.:.:.:.:.::: }' i .
         _,.-'~ヽ l ::::.:.:. `!ー '" ry'`ーi ::.:.:.::::..: l  r,!
      ,.-='´   `、゙、,l ::::.:.:.:. l .`t-r'  i ::.:.:.::.:.:: l リ ! l.
     / `ヽ,    ヽ l :::::.:.:. .i 冫l '",i .:::.:.:..:.:. l ,  i, l   
    rー'ュ、 ゙,  _, -=' ト-t_ :.:. \_⊥-' :.::.:.:.,..._,./  ,7 `;t  
  : . ,ヘ.! i^,.`i /' ~ .   loj :.:~`rー '"~  ̄ ̄l oj l ;'     l 
   ヾ、」y' _r'        .i´、:.:.:∫::.:.:.:.:. .:. :.: , `´ `t ..,_   !
    `7,' ´        _,l._ ` ! :.:::.:.:.:. :. :.:. :.:. :.:.: { l,  `  `i 
                  土井利勝

 この時期、宗矩の体調は相変わらずの様子だったようで、
これを憂慮した伊達政宗は、年寄の酒井忠世に対し、休みをやるよう書状を出している。

 『又右衛門、此中散々之様子にて、第一食一切成不申候、
  其身は御暇可申とも不申候得共、今之体ニ候者、行々大事に存じ候、
  永可被召使者、今僅少之御暇被下、有馬之方えも湯治仕候而、機をひろげ候者、
  可致残命かと存候』

 この書によれば、この頃の宗矩は、見た目にも弱っており、また食も進んでいないので、
政宗は、「(宗矩は)この後も永く仕える者なのだから、今は休みを与えて、
有馬などへ湯治に行かせてはどうか」と提案している。



314やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:16:54 ID:wK+ZuHSZ
                \-_
                 /  \
        ,,,,___,,.-‐一'' ";;-‐ヽ  ヽ
        「        \ ノ    l
       i         , へ
        "j          <
        }      __,,_,,./ } ヽ
        "「   .,/'゙ !`\   /        ふーん、柳生の奴、そんなに悪くなってたのか…。
   __   ll   /″  ・〆ゝ  ヽ       大丈夫かねえ…?
  √  i !!!!/      丶.´ l /  \
  | r⌒ヾ !!          '     丶.      …休むかどうかは本人次第だけど、さ。
  | { て !!!               /  
  | L  )  !!!   ゝ、          ゝ    
  \ ""ヽ      \         /     
    \_ソ      {         "";     
     i        {          /
_,, .-‐''"    i ゝ             ヽ
         i  l              i
         l  -             /
          t  ゝ丶、._______/
          ゝ        ノ
           ヽ      /

 なお、この提案が通り、宗矩が休みを取れたかどうかは不明である。
(休みが与えられても、宗矩が自ら断った可能性もあり)



318やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:18:56 ID:wK+ZuHSZ
 そしてそれから更に時が過ぎ、
年も明けて寛永六年(1529)二月…。

                    (二二二ニ/二二ニ/二|二二ヽ二ヽ二ニニ)
                    //_/__//_/__//_/| |ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
                   //_/__//_/__//_/_| |__ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
                   //_/__//_/__//_/__| |_ヽ_ヽヽ__ヽヽ_ヽヽ
   二二二ニ/二二ニ/二二二//_/__//_/__//_/_| |__ヽ_ヽヽ__ヽヽ_ヽヽヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ
   //_/__//_/__//_/__///_/_//_/__//_/_ | |___ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
  //_/__//_/__//_/__//○====○====○======.○=====○===○===○===○ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
  //_/__//_/__//_/__//_|   |┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬|__|_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
 ○====○====○====○===.|   |││││││││││││││││||  .||===○===○===○===○===○
                  |   |││││││││││││││││||  .||
                  |   |┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴|| 柳 ||
                  |   |┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬|| 生 ||
  ___________|   |││││││││││││││││||   ||____________
  \/\/\/\/\/\|   |││││││││││││││││||   ||\/\/\/\/\/\/
  /\/\/\/\/\/|   |││││││││││││││││| ̄ ̄|/\/\/\/\/\/\
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄``````````````````````````````` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ ―  ― |
   |::::::( ( ●) (●)|    さて、殿の命により来てみたが、
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)  果たして叔父上の具合は如何なものか…?
     |     ` ⌒´  | 
    \         /    …頼もう!
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ 
     |  \/゙(__)\,|  i 
   柳生権右衛門厳倚
(兵庫助の弟・伊達家剣術指南)



319やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:20:22 ID:wK+ZuHSZ
          .、'''ー'`'''''"`"`'ー、 
        /   ,,  ,,,// ィ ,,,rr )  
        {   |从 lll",,," llllj '' `'ー、r
       { 从从´´´从从从iiiiiii lll从 ll ,
       { 从从ll|||'''从从:::''''""/"jj  }
      {、-、|lllll|、,,, l|||l从;;;;/''"'彡シ   }    これは、権右衛門様…!
      (ミ'ミ   ゙゙''' 、ィヽ)ヽ::    '彡:シ }    本日は何用ですかな?
      ミッ|      リノノ:::::::  ィ彡,,ノ,、}
      { ミ}r 、_ {  "彡::::::''" ,,゙'' 、::j´、',
        }::l|ー-、ヽ}_ O'"_,,、-''イ::ツ }jリ, リ
        ヽ',シミ゙'、;;ヶ、ili、ィ;ィ;;乏彡ミ /ノ''/|,,,,__
         '、 `""´: | ''''''::::: ̄  /イ,,/:::}
     ,,、- '''"ヽ   ,l,,  、:::::::   /リ:   } | ̄
 ,,、-''"      ヽ  `'-''´  ッ::  j::   レ
'"(         :ヽ  ー-ー ''´:::   ノ::: ヽ/
  ヽ,,,,,, 、-、    ::ヽ  '''''''"ツ:::: /:::   /
        ヽ  ri::::ヽ   レ' /:::::  /
゙' 、      ヽ/ t::::::::'、,,_,,/::::::  /
 ̄`'' -、     ゙' 、ヽ、::::::::::::::::: ::::/      ,,
            村田与三

      _____
    /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
     |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
     |::::::::/ ⌒  ⌒ |     久しぶりだな、与三。
    |:::::::〉 ( ●) (●)|    叔父上はおられるかな?
    (@ ::::⌒(__人__)⌒)   殿の命により、見舞いに参ったのだ。
     |     |r┬-|  |   
     \    `ー'´ /     「はっ、暫しお待ちくだされ」
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
     |  \/゙(__)\,|  i |
     >   ヽ. ハ  |   ||



321やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:22:06 ID:wK+ZuHSZ
     |┃
 ガラッ. |┃      _____
     |┃     /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
     |┃三   |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
     |┃     |::::::::ゝ /  \ |    お久しぶりでござる。
     |┃     |::::::( ( ●) (●)|   叔父上、お体の具合は…?
     |┃三  (@  ::::⌒(__人__)⌒)
     |┃三    |     ` ⌒´  | 
     |┃      \         /  
     |┃   ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
     |┃   :   |  '; \_____ ノ.| ヽ 
     |┃      |  \/゙(__)\,|  i 


 …久々だな。権右衛門             ,-─‐──、 
                          ./        ゚ .\   ;:.
 こんな格好ですまぬが、          l  U      ;  |_:;:災/⌒ '"⌒ヽ、
まあ、身内のことと思うて容赦してくれい。 |  _ノ′ヽ、__  | 災 ;:. ー     \
医者の薦めでな、灸を吸えておるのだ。  .! (●) (●) .|   災.    ,;    \,rー、
                          .ゝ (__人___)"' i'′⌒ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ  ヽ
                         (  ヽ `⌒´  _ノ ヽ、____"___,、___ソノ___ノ
                         ゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'



322やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:24:22 ID:wK+ZuHSZ
                              ,-─‐──、
 最近、少しずつだが効いてきたようでの。  /        ゚ .\   ;:.
割とマシにはなってきておるようなのだが…  l  U      ;  |_:;:災/⌒ '"⌒ヽ、
                            |  ⌒   ⌒  | 災 ;:. ー     \
 あー、この熱さがなんとも…           ! (=) (=) .|   災.    ,;    \,rー、
                             ゝ (__人___)"' i'′⌒ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ  ヽ
                             (  ヽ `⌒´  _ノ ヽ、____"___,、___ソノ___ノ
                           `゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'
     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ /  \ |     なら良いのですが…お気をつけ下され。
   |::::::( ( ●) (●)|    叔父上も来年には60ですぞ。
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)   煙草も控えられてはどうですかな?
     |     ` ⌒´  | 
    \         /  
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ 
     |  \/゙(__)\,|  i 

 この頃、寛永六年二月三日付けの、宗矩から細川忠利へ宛てた手紙には、

 『拙事煩切々再発仕候へ共、無理に罷出候へば、何ともつまり候て、迷惑致事ニ候。
  近頃灸など候て、少しよき様ニ御座候、御心やすく思召被下候、忝存候。
  相果候事中々御座候まじく候』

 とあり、再発の危険はあったものの、灸を据えるなどして、
快方に向かっていることが記されている。



324やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:26:18 ID:wK+ZuHSZ
    ./ ̄ ̄\
   ./    / \    
   |    ( ⌒)(⌒)   
 彡| u.  ||i (__人__)    ん、灸も切れたか。
   |   u. / ̄)ノ    あ、よっこらしょっと…。
   |   / / }     
   ヽ _/ /  }     
 彡/  /  .'´ヽ   .
           ヽ⌒)


   / ̄ ̄\
  /  _ノ ヽ_\
 |     (⌒)(⌒)       ははは…これはなかなか離せぬ。
. | u   (__人__)      どうにもクセになってしもうての…。
  |      `⌒´ノ ) ;;;;)
.  |         }  .) ;;;;)    権右衛門、しかし、そう言うお前も
.  ヽ        }  /;;/   もう50も間近なのだなあ…。
   ヽ     ノ  .l;;,´
. /    ∩ ノ)━・'
 (  \ /|_ノ ヽ
. \  ""  /_ノ  |
   \ /___/

       _____
      /:::::::::::::::::::::::::::.\
     |.::/⌒Y⌒ヽ:::::::::::.|
     | ⌒  ⌒  i:::::::|     まったく、早いものですよ。
     |(●) (● ) 〈::::::|    …そういえば、又十郎殿も出仕されたそうですが、
      (⌒(__人__)⌒:::: @)   如何なものですかな?
     |  |r┬-|     |
     \ `ー'´    /
    ,-- ゝーー ___/ /ゝ--、
   イ / |.!、 _____ / ノ |
   | i  |,/(__)ヽ/   |
   | |  | ハ /    <

 寛永六年、この年には宗矩は59歳になっていた。
また、権右衛門も50歳手前~40歳半ばだったと思われる。
(主馬の妻になった兵庫助の妹よりも更に年下なので)



327やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:28:18 ID:wK+ZuHSZ
  -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ  \
//, '/ ─  ─ヽハ 、ヽ
レ!小l (●) (●)从|i|
 .| ⊂⊃(__人__)⊂|   左門兄と一緒に頑張るでしゅ!
 .|      ( <   |
  ヽ     `-'  ./
 /   ヽ     ノヽ
./ /   ∩ノ ⊃|  |
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
 . \ /___ /
   柳生又十郎
   (後の宗冬)

 前年(寛永五年)、兄・左門に続き、又十郎も14歳で出仕している。
役目は同じく家光の小姓(小姓番入り?)である。



328やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:30:04 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)
 |    (─)(─)  /;;/
. |    (__人__)  l;;,´     …あやつは十兵衛、左門に比しても未熟者じゃ。
  |     `∩_ノ)━・'     .稽古にも今ひとつ熱心ではないし、
.  |     |_ノ        それに体も弱い…難しいところじゃの。
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |
 | \ /  _/


             / ̄ ̄\
           / \.i||i./ \    _,,
           | ( ●) (●) |    l;l
          . |   (__人__)  | _,_,|,|_,      なんにせよ、十兵衛の奴がしくじり、
            |   ` ⌒´  |, ト-=y  丶    左門も又十郎もまだ未熟である以上、
          .  |         }  ヽ `i, ̄‐^l   とてもではないが、隠居などできぬ…。
          .  ヽ        }   ヾ~ `  i,
             ヽ     ノ _   ヽ、   ;i,  わしがやらねば…誰がこの柳生家を守るのじゃ!?
            ,,_,i     y,ソト,,__  ヽ、   ;i,
           ,/r-'"j  / / ii, `ヽ、-x,,゜r  ;i
        ,,/'/__.L、    /ヾ、"i   `ヽ `;i  i,
      ,/  /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i     `、'i   iヽ、
     _,) ヽ "   ネメ、_ii"~        _Yri   l, ヽ、
    _,,,>t 、ヾ、    ゞ;;/         /  ,¬    V⌒l
   ,y`;,,__   ,i     /ii'         / r-/|    l l
_/^,,,  ヘ  l    /iil        /  l"v' y     }  l



330やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:32:10 ID:wK+ZuHSZ
        / ̄ ̄\
      /       \     最近、父上のことをしきりに思い出す…。
      |::::::        |
     . |:::::::::::     |    かつて、兄上が腰をやられ、
       |::::::::::::::    |   五郎右衛門兄も、わしもまだまだ幼かった頃の
     .  |::::::::::::::    }     父上の悲嘆と苦労は、どれほどのものだったのだろうか、と…。
     .  ヽ::::::::::::::    }         ,::::
        ヽ::::::::::  ノ        (:::::ソ: .
        /:::::::::::: く         ,ふ´..
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ――
         |:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´

     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ /  \ |
   |::::::( ( ●) (●)|     叔父上…。
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)
     |     ` ⌒´  | 
    \         /  
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ 
     |  \/゙(__)\,|  i 



332やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:34:09 ID:wK+ZuHSZ
          , --────-- 、
        /           \
       /              \
     /          l        \
    ./           !、  ::::::::::::::::::ノ.\
   /             _`'- :::::::;;;;;;;;;;-'´:::: \
  |         / / ̄\\:;;;;;;:// ̄\\
  .|        | |. ○ .|  ,|:;;;;::| .| ○ .||
   |         \ \_/ /::;;;;::\\_//     …そう思うほどに、
   .|             ,/   ::|::     \       この柳生家を潰すような真似だけは
    |            |    |     |      絶対に看過できぬのだ…!
    |            |    |     |     
    .|             \__/\__/|       それがたとえ、甥であろうが、
    |.              トエエエエエイ  |      …我が子であろうがな!
    .|                   '.{    :l    }/ /   
     |                   .{   :l    }/ /    
      丶                  .{       }  l    
      \                 、`ー一一 ' /    
       .\                       /
       /ヽ                / 



334やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:36:29 ID:wK+ZuHSZ
     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ      …お、叔父上。
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|     叔父上のお心は、我らもよく存じておりまする。
    |::::::::ゝ  ノ  \ |   
   |::::::(U( ●)  (●)|     兄上も、今や尾張公の下で
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)    柳生の名を高めているのですし…。
    |     ` ⌒´  |   
    \ /⌒)⌒)⌒) /  /⌒)⌒)⌒)
    ノ  | / / /  (⌒) / / / /
  /´    | :::::::::::(⌒)  ゝ  :::::::::::/
 |    l  |     ノ  /  )  /
 ヽ    ヽ_ヽ    /'   /    /
  ヽ __     /   /   /


       (⊃ ̄ ̄\
     (⊃   _ノ  \
    (⊃   ( ⌒)(⌒)      ははは、すまぬな。
     |     (__人__)      なに、お前に怒っておるわけではないのだ。
     |     ` ⌒´ノ
       |         } \     それに、兵助の奴とて、お前が言った通り、
     /ヽ       }  \   己の家を良く守っておる。
   /   ヽ、____ノ     )  今更、わしが怒るようなことはあるまい。
  /        .   | _/
 |         / ̄ ̄(_)
  \   \ /| JJJ (
   \  /   /⊂_)



335やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:37:39 ID:wK+ZuHSZ
     / ̄ ̄\
   /   _ノ  \     なんでも、義直様に新陰流四世を継がせ、
   |    ( ⌒)(⌒)   新陰流を尾張の御流儀にしたと言うではないか。
   |      (__人__)   あやつに、あのような機転が回るとは思わなんだぞ。
.   |        ノ    なかなかの手ではないか。
    |      ∩ ノ ⊃
  /     ./ _ノ
  (.  \ / ./_ノ │
  \  “ /___|  |
.    \/ ___ /


   / ̄ ̄\
 / ノ  \ \/`i       男子も3人おるらしいし、
 |  (●)(●)./  リ      弟子も多く、道場も栄えておるそうじゃしの。
. |  (__人__)..|  /       おそらく、尾張は大丈夫であろう。
  |   ` ⌒´ リ  ヒ
.  ヽ     //  ,`弋ヽ     むしろ権右衛門、
   ヽ  - ′.Y´  , `ヽ`.l   お前も伊達様の下で一層励まねばならぬぞ?
   /〈  `ー〈::....ノ   V
   | ヽ_ー 、 `ヾ_/ //
    |    フ-、`ー┴‐-〃
         `ー‐一′

     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ノ   ― |     
   |:::::::〉 ( ⌒) (⌒)|     ははは、肝に銘じております故、
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)   堪忍くださいませ。
    |  u  |r┬-|  |    (変わらないな、叔父上の説教は…)
    \    `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. 
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||

 なお、この頃、権右衛門は仙台伊達家において
剣術指南役として700石(あるいは100石とも)を受けていたとも言うが、詳細は不明。



336やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:39:48 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\
  /  ノ  \\
 |  .(●)(●)  |     …むしろ、わしが今、悩んでおるのは、
. |  (__人__)  |     このわし一代の工夫…真の「大将の剣」の確立なのじゃ。
  |    `⌒´  |   
.  |        |    .) ;;;;)
.  ヽ       }   /;;/
   ヽ     ノ   .l;;,´
. /    ∩ ノ)━・'
 (  \ /|_ノ ヽ
. \  ""  /_ノ  |
   \ /___/

   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)
 |    (─)(─)  /;;/   わしが今まで工夫した全てを大成し、
. |    (__人__)  l;;,´   将軍家が修めるに相応しい大将の剣を
  |     `∩_ノ)━・'    まとめあげねばならぬのだが…足りぬのだ。
.  |     |_ノ
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |
 | \ /  _/

     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|
    |::::::::ゝ ―  ― |
   |::::::( ( ●) (●)|     足りぬ、とは?
   (@  ::::⌒(__人__)⌒)
     |     ` ⌒´  | 
    \         /  
 ,,.....イ.ヽヽ、___ ーノ゙-、.
 :   |  '; \_____ ノ.| ヽ 
     |  \/゙(__)\,|  i 



337やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:41:05 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /   _ノヽ_\   ) ;;;;)
 |     (●)(●)  /;;/
. |     (__人__)  l;;,´    …「善智識」。
  |     `∩_ノ)━・'    即ち、心法の部分について、
.  |     |_ノ       わし一人だけでは満足のいくものが仕上げられぬ。
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ      真の「大将の剣」のためには、
 |\     /_|  |     わしだけではなく、上様をも教え導く良師が必要なのだ…。
 | \ /  _/

     _____
   /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
    |.:::::::γ⌒^Y⌒ヽ::.|     良師、ですか。
    |::::::::ゝ ─  ─ |    そういえば、叔父上が懇意にしておられた和尚が
   |::::::( ( ●)  (●)|    おられましたな。
   (@  ::::  (__人__)  )
    |     ` ⌒´  |    その方はどうなのです?
   /     ∩ノ ⊃/
   (  \/ _ノ|  |
   .\ “ /__|  |
     \/___ /



338やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:42:36 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\      その沢庵殿は紫衣事件の真っ最中だよ馬鹿。
 /   _ノ  \    だからわしも苦労してるんだ。
 |    ( ●)(●)  堀直寄殿と共に、天海様のところへ出向いたり、
. |     (__人__)   年寄方へ取り成しを頼んだりしてるんだよ。
  |     ` ⌒´ノ
.  |         }  ミ  
.  ヽ        } ミ  /\  ,☆ピコッ
   ヽ     ノ    \  \ _____
   /    く  \.  /\/::::::::::::::::::::::::::::.:ヽ
   |     `ー一⌒)    |.::::γ⌒ Y ⌒ヽ::::::|
    |    i´ ̄ ̄ ̄ \   .|::::/ -  -  |:::|   そうですか。
                 .|:::〉 (●) (●) 〈:::|  すいません。
                (@ ⌒(__人__)⌒ @)
                 |   ` ⌒´    |
                 \        /

 前述の秀忠による「大徳寺・妙心寺での出世入院の厳禁」の命に背いた罪で、
宗矩の知己である沢庵、それに玉室、江月を加えた三僧は、幕府より罪に問われていた。
これが「紫衣事件」である。

 この際、事情を聞く為、寛永五年に江戸へ召喚された三僧の罪を軽減する為、
宗矩は村上藩十万石の藩主・堀直寄と共に、取り成しに奔走していたのである。
(この件については、次回解説する)



340やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:44:52 ID:wK+ZuHSZ
     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ノ   ― |     まあ、それがしは僧のことにはとんと疎いものでして…。
   |:::::::〉 ( ●) (●)|    …おお、そういえば、もうひとつ思い出しましたが、
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)   先日、一刀流の小野忠明殿が亡くなられたとか。
    |     |r┬-|  | 
    \    `ー'´ /     叔父上、その件については如何ですかな?
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、. 
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)
 |    (─)(─)  /;;/   如何と言われてもな…。
. |    (__人__)  l;;,´
  |     `∩_ノ)━・'     大御所様の下で同役を勤めたのも昔のことであるし、
.  |     |_ノ       子の忠常殿も、特に指南役として出仕しているわけでもなし…。
 /ヽ    |  |_       .如何と言われても困るのじゃが。
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |
 | \ /  _/



341やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:47:51 ID:wK+ZuHSZ
 ここで時を遡る。
寛永五年(1628)十一月七日、ある人物がその生涯に幕を降ろした。

  .__,, '"/::::/ノ::::/ /:::::'::,::::::::::::::::::ー-:::-、:::::::i (,' ,-‐、ヽ ヽ ミ::、''‐- 、:::::':.、
  -=;;_:ノ::::::::/_ノ_,':::ヾ::::iヽ、_i`::ー-`、:::::::‐-、::フ\i  ノ ! .|::::::ヽ::::::::\―`
  _,,ノ::::l::::::::::::::::::::::、:::::`:::::::::::\;;;;;__彡、:: ̄/>、 ヽ,,_    i ̄ ̄ヾ! ̄`
. _ ゝ:::::}::::_,'!:::::::/::::ヽ:::::::`ー--`::::::::::::::ヽ;__三::::::ヽ =-;)   ):.:.   \  /  /:
 `/-‐"ヾ/ヾ::::! :::::::):::::::::ヾ::ー-::、\;;_:::_ノ::::::/:,:,:,:,:`、 _/_:.:.:.:.:....   ×   ./:::
. ノ_,:-‐'"ノ;;;_ノ::::ヾ:::ヽ::::`、:::::ヽ、:::_ヽ:|:::::: i彡":,:,  .,.,:;:;:;:;:;:;:;.,.` 、:.:.:.:.:./:,:,:,.  |:::::   これが…俺の道の終わりか。
 ヽ彡 :'"/ ノ:::::::::::\ノ::::::::::::::::::::::::::::::::!゙` 、!:,:,:,:,:,:           \ /  `:,:,:,:,:.::::::
./::::::::ノi/::!: /.|::i:::::::i::::丶:::::i'、::::::l:,ヽ!:,:,:,:,:,:,:,:,:,:,:,:,:,:,:.:::.:,:,:,.    '"\     |::::
.>'彡 ::ノ::::',:!ノ:::!ノ::::::::!:::::::`::::| \!:.:..`     |:,:'" /:,:,:,:   ...:.:.:.:.:.:.:ヽ    lノ
`フ ::, "::::::::::::::::::::ヽ:::、:::lヾ!ヾ!ノ~ゝ:.:.:.:.:.:.....                   ',  ./ :::
  ̄|::::i::::::::::::::::::::::::::::::ヽ`‐  .|:::::|  ,i./ヾ;;                  ..:.:.:.,/.:  ::
  ノノ、::::::::::::::::::::::::::::::::_>  }:::::|  //  ,              \:,:,:.:.:.:.:/:::::::::..:, '
     .!:::::::::::::::::::::::::::::::\  /:::::|:::://ミ:;;/                    l:::::::::::::,'
     ノノ、:::、:::::::::::::;;;;___ゝl::::::::i: ̄  ::`"                 ,:::::::::::::i:: :
     ', !ヾ::ヽ、,::::\-、_ -ヽ-_"_`                    / : :::::::::!: : :
      ヾ `ヽ! ` ‐-`   ̄   \          、    ,i::    ,,:,:,:/: : : ::::::,':::::::
.                    \/    /,'ヽ,__//       /::::::::::::::::i::::::::
.                      \    /     `‐- "ヽ、_/:::::::::::::::::ノ__::
                           ヽ _/         .|:::::::::::::::::/:::::::::::::`,
                                      l:::::::::::::/.::::::::::::::::::
               小野次郎右衛門忠明

 かつて秀忠の下で、宗矩と同役を勤めた将軍家剣術指南役、
一刀流・小野次郎右衛門忠明である。
享年60歳。



342やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:49:40 ID:wK+ZuHSZ
 そして、忠明の死後、その一刀流は二つに分かれた。

                 _, ィ __ , _
            , ィ. ィノY´: :´: ィ : : : Z__, ィ
        - 、}Y :´: : ;. ィ-¬く: : : : : : : : 厶_
       /: :>、>!イ‐'´   _  `ミニイ_, : : : <
        /: :/ / /   /二`  く : : : Z : _; : :Z
     /: :/  ヒ、}_、ィ´ィヒ! ノ__  ミ: : :/^'く: : :了     親父からは、太祖・一刀斎先生の”伊藤”姓、
.    //   沙′   ̄     ミ:/ ^) }: : :ヒ.     それに親父のかつての名、”典膳”、
  //     {、 - \     , ミF_//: : :く     そして瓶割刀を受け継いだぜ!
  `-、\    l L=- ‐- 、   /  ミf_タ: : :`ャニ´___, ィ
    \ 、   、V´  ̄` ヽ 、l  ミ爪 : :ヽリ : : : : :厶ィ
   r ,ニン    Λ '、: / ̄/  `ミxミ′ 〉: :Λ : : : : : :く
   |{       Λヽ-_彡′ 、xミ′   ^V 丿; : : : : :丿
   ` ¨ ´     Λ 'r‐ ' 、xミ`      弋ニ-、: :、:く_,
            リ川 !l少'`       _У三V `ー'′
             `¨`\       _/_三二ニ\
                Λ    _/_三二三二三\
              伊藤典膳忠也

 まずひとつは、忠明の次男(長男弥助は既に死去)・伊藤典膳忠也の興した
「忠也派一刀流(あるいは伊藤派一刀流)」。



345やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:57:04 ID:wK+ZuHSZ
   _,,...-―-..,,_                               __,,.
 /       ""''ヽ、                        _,.-‐'"/
/            \                  _,,,...-‐''''" _,,,./
|  こ  だ  ほ  オ  'i            _,,,...-‐''''"  ,,, -‐'''" /     
|  と   っ  ん  レ   l           ,, -'    ,,-‐' "   __,.i'"
|  を  て  も  .の  i'      _,. -'" _,.. - ‐ ''" _,,,.. - ‐       / ̄ ̄ ̄"'ヽ
|  よ    の  剣   l    ,.-‐'" _,.-‐'"  _,,...-;ゞミ^ゞミゞミゞミ;ゞ,    l.    証  l
|  ォ        は  >,.-'"  ,-'"  _,.-'"ミ>ゞミ^ミゞミ^;ミ>ゞミゞミ;,   l     明  l
\          /,..'" _,.-‐' ,.-‐'"   ミ'"''"''"'"~''"'";'";ゞ;ミ;   l.  や  し  l
  "'ー---- ニ''''''"")'"、,-'" _,.-‐' .     ミ         ";;ミ;  /  る  て  l
       /,_x">;,く/  _,.-'"          ハ"ヽ.,  _,.r''"  lrヽ,  ̄l  ぜ    /
     ,,.:ヘ,..:へゝ'"i-へ           丶i"'・-i ''‐・'';  .l〆ノ   \___/
    ,.ヘ"'く"_∠_<r=/     .       i.._.,(_...    /‐'"
   i"ヾ,ヽ,;t'( )__,,)r-,,,,___,,,....,,,    ,.......,,,..;;'",.('"ヽー'' ,.イ",,...,
  /ヽ.,_i;,)'";;;;;i,;:;:;;i;;);,,,..   "';''ーニ#ヾ,ヽ;;ヽ-,,,) ノ'-‐''"iヾ"(..;;),,...
/"'‐ ..,/'':::'":::::;;;;;;;;::'"    '";.,    "';ヽ;=)'";;,tノ i; i; 'i'i,ノ,,(ニゝ,
ヽ,,_  フ       "''‐-..,,__,,...,,,_"''‐- ....::::ノーl"'ヽ,/,i i; i; 'i,'i:::;ノ;;;;;;ノ)
  "''"                 ̄""'#;;Yノノ:::::/::i;/ ;i 'i, i,i::i::::;;;;;ノ丿
                       :Y;;;r::/::::/::::;)' ;i  i i,i:;:;i::;i::/"i
                       /::/::/::::/::/ /;, ,;i i,i:;::i;::t_, 'i
                          小野助九郎忠常

 そしてもうひとつは、忠明の三男・助九郎忠常の興した「小野派一刀流」である。
(後に忠常は「次郎右衛門」を名乗り、後、代々この名は継がれることになる)

 これにより、忠明の子孫は、剣だけではなく、家もまた二つに分かれた。
忠也は新たに”伊藤家”を立て、また忠常は旗本の小野家を継ぎ、
引き続き将軍家指南役の家として名を保った。



347やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 21:58:16 ID:wK+ZuHSZ
             __             
         _ - ´: : : : :` ー 、           さて、この忠明の跡を継いだ2人の剣士、
       /: : : : : :.:.ヽ: : : : : ::.:.:.:\\       「伊藤典膳忠也」と「小野次郎右衛門忠常」について
      /: : : : : : : : :.:.ヘ: :. : : : : : .:.:.ヽ.:\     軽く解説をしよう。
     '´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ハ: :.l: :!: : : : : :l
     i: : : .: : . :. {.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ハ.: !: : : :}      この二人については、
     |: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:....:.:.:..:./.:.;.': /l: : : l : ;′   親である忠明よりも記録が少ないんだけど、
     |: : |: :.|: : : |::|: : ::.:___イ.:/;/Vく : :./}:/     その中で割と話題に上がる点といえば、
     \|: :.|: : : |:.|: : :∠rテテミ  tり:.:/ l/
      \|ヽ: :|.:|: : :弋弋zソ ヽ jⅣ         1 : 忠也は忠明の弟か息子か?
        }ヽ仆ヽ: : : :lN   _ _/: :l          2 : 忠常は家光の剣術指南役だったのか?
       / ̄ ̄``ヽ、: レ'´ ̄`): : : :l
     /        V  `ー ユヽ.:.|         というところになるね。
              |     ユ、l../        ではまず、1から順に進めようか。
             |     l ハ'′



348やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:00:53 ID:wK+ZuHSZ
                   -──-
               ,  '"´            `丶、
           /                     \
          /                      ヽ
        , '                         ',      今回は「息子」と紹介したけど、
.       /                  ',               この忠也については、
      //     /   ./         ハ               「忠明の弟である」とする説と、
.     //     l:   ,'        /         l        「忠明の息子である」とする説の二つがあり、
             ハ   !       /   |        |        どちらにも論拠が存在するんだ。
     | |    _l」⊥.、|    -‐‐,イ‐- ...,,|
     |       !.! ヽ/l       //    .|       /         まず、弟説についてなんだが、
       ',    .{イ示ヽ',   ./ ィfテミメ、 !     /         これは、「寛政重修諸家譜」、
      ', ヽ  .ハ ヤ:::} ヽ/   rテ:::::} 》ノ   /}      /    及び小野家の家譜によれば、
.     l  \/ ヽ ゞ''      弋zシ/ _./! ,'          「忠也は忠明の弟である」と明記されており、
.     |       八  ヽ         ̄l   レ'     |     「兄・忠明と共に一刀斎に剣を学んだ」と
              ヽ   、 _.       ,'   .,'        |     されているんだね。
     /         \ / r/ヽ     /   ハ ,'
    厶イ八 ハ   ハハ /-‐´ イ≦ ´ /   / V  /l .ハ ',     そして、息子説の方については、
       ,ヽ! .\, イ   ^ ‐---- 、 イノ/   ヽ/ j/ ヾ、    「一刀流三祖伝」「武芸小伝」において、
      |  ヽ, ´       ^ヽ‐--r >       ヽ        「忠也は忠明の長男(※)である」と記述されているのが
      .|   ヽ,         \./ /         ヽ       論拠になっているんだよ。
        |    ヽー────‐、 ∨}      _,,,... -‐ 、      
       |       /       \\,..   ./      ヽ      ※ まあ、実際には次男なわけですが。
       |       .i         ー─'   /         ヽ
       |       i       /   __./          ヽ



349やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:03:19 ID:wK+ZuHSZ
            _ -  ̄` ー
          /         \        で、まあ、これだけを比較すると、
         , '       ,、 、   ヽ      結構微妙な話が多い「一刀流三祖伝」が論拠な分、
        / /     ,ィ ィ/ ヽ ! |   ヽ     弟説の方が確度が高いようにも思えるんだけど、
        ,'  l , -‐-x i / イ-─リハ l ヘ ',     他の点を確認してみると、一概にそうとも言えないんだ。
          i  l  ァ≠、/    ィニテ!/  l !
       ,'.|  ゝトヘヒノ   ,   ゞ-ィ fヽ | l      というのは、まず年齢的な問題。
       ! !  ヽ_',    _ __  | f ' i i     忠也は延宝八年(1680)に78歳で亡くなった、とあるから、
         { ト    ヽ、     ,イィ/ ィ i l,'     生まれた歳は慶長七年(1602)になるわけなんだけど、
       トゝヽヘ_、-、_` t - イ /!ィハ/ソ      これだと、忠明との年齢差は34歳差で、
                  r z'   ,k-、          年齢的に「弟」というより「息子」なんだよ。
             _ ┬ ヘ   只  /`7-、  
        / ', ',  ヽ/  ヽ'  / / \      おまけに、忠明が一刀斎と分かれたらしいのは
          ! 、 ヽ 丶         / /  X!     忠明が仕官した文禄三年(1593)より前だから、
       | !   ヽ ヽ    , ' , '   ' |    共に学ぶ、というのも考えづらいんだね。
        |   !    \\ _//   , |    
         |  l     \ /     ,'   |     それに、「忠也」の名も問題で、
        !  ヘ     Y     /   |    忠明の元々の名は「神子上典膳」、
          |   }       \      !    !     あるいは「神子上次郎右衛門吉明」といって、
          !   l     ヽ\   |   l    どこにも「忠」の字が入ってないんだよね。
       |   i            |   |     つまり、「忠明」を名乗った後で生まれたから
         j   l              |   |    「忠」の字を受け継いだのでは、ということなんだよ。
       /   /              ヽ   |    (「忠」の字は秀忠から与えられたものなので、
      l     ゝ_ - ┬┬ T ┬ノ   |     弟だからと言って勝手に名乗らせるのも不自然)
     /    / | |    | !  | | |   |   
     /    /  | |     ! i   | | l   |     まあ、小野家家譜も、それを元に作られた
     ,'     i  | |    | |    !  | l  |    「寛政重修諸家譜」も、忠常の家系のものだからね。
     ヽ   l  l  !    |!   |  | l  }   長幼の順、という意識で考えれば、
    /   l  l  |    |i       !  〉    忠也が兄である、というのは都合が悪かった、
    T ‐- /         |          ! i    というところではないのかな?
     ├-イ             |        ├ !   
     | y'                     ヽ!    まあ、そういうわけで、
     V |                |   !   忠也については息子説の方が
      /_r──t__,_ ,-、_ ,、__ -─- !    確度が高いんじゃないかな、というわけさ。
     | iヽ、:|         |::::::::|      |::::::r´   くっくっ。
     | | | | !      |`ー.!       ├ ´    
     | | | | l      |   |       |
    「i´T-tj`'!     |  |      |
    | | !    '.       !   !      !
    | | |     '.      |  l      |
    | | |     '.      |    '.     l



354やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:06:02 ID:wK+ZuHSZ
                    , -ー - 、         
             __      r'  r-、   ヽ,      さて、次は2だ。
           /´  。  ̄~`゙ '  l;;;;r,`、,  l     「小野忠常は家光の剣術指南役だったか?」という点だね。
    ,r '^゙`ヽ、/   ゚         `ー-`´ ノ
   /  /、        _, ,_ _      <´.      結論から言えば、
  /   ./;〈/l    , -i'´l:.:.::::l:.:l:.:.:.:l`゙ヽ、_   \..    「おそらく指南役ではなかった」というところになるんだ。
  l   /;;;;;ノ  _r ':.:.:.:.:::.:l:.:::::l:..|ヽ、:::i,:.:.::::.:ヽ,   ヽ,
   k      /...:.:.:.:.:.::::.l.:.::::,':.,'  ゙、:i,:.:.:l:.:.:.゙i、   ゙i,    というのは、「徳川実紀」を確認すると、
   `ー-フ /:.:.:l:.:,:...:.:::::ハ::/l:,' ‐''゙´ ヽ;i,:.,'::.:.:l.:.゙i,   ゙i,   忠明に関しては、秀忠の「剣術の御相手」となったことが
     /  ,l.:.:.:.:.l:.,、:.:.:.,'_i'l,'/'   ,,rtz-/:::ト,:.:.:.:..l    ゙k  はっきりと明記されており、また、剣の腕についても
     /  l..l,;、:.、ト、l゙_ィztt、     辷_l,':.:.l,':.:.:i:.:.l    } これを賞賛する記述が残っているんだ。
 .   {   .l.:.i、;ト、:ヾ'て辷_l     ~¨r'.:.:.l:.:.:/l:.ノ    ,'
     l   /'Y:.:.`゙:.:T、ヽ`゙¨´   '_    l:.:.:..l゙./_/'    /   それに対し、忠常についての記録は、
    ヽ_,l_.ト k、:.:.i:.:.:.:.~` 、 _ ゙-' ィイ:.:,'/-ー'    /   あくまで「剣術を上覧」したことしか書かれておらず、
  r yー'、.、i~'-'-, 、;;、'``~''r-ーTニ_ニ-'、~} (~)_,,- ´     家光に限らず、誰かの指南役となったという記録は
  ヾ、i^.、{.i,l  /,アr--、__,,}     ゞト、ノl {  `ヽ, _   残っていないんだ。
  _,l'_,_ __,,-´/´        r-、_ノ l, l  l ,l`-'' ゙_~_.)
  ト、i_ ~ィく , i´    /    ーt 、_ー' `'゙ ヽ_,' /~ k    同時期の柳生の場合、宗矩は当然として、
  ,i 0 `~'゙{ r      ,r'  _ ,,..r''-' 、-i   i   l   i,   その後の宗冬などについても、
  l 0   / .}   ,r'´ ,r'´  /`^゙`ヽ、      l  ,/'   指南役となったことは明記されているので、
 ,l    l ,'   ,/  /    /l     ヽ、   〈 l, {    そのことを考えると、忠常は指南役ではなかったと
 |    l/   l ,/    l .|      l_     l l    考えるのが妥当だと思われるね。
 |     l、   ,i、 l        |       ,i゙k     l {
 ゙l       / ゙y     , i       ,i i    `゙i、    ただ、「小野家」としては、
  ゙l     /  /       | . i     i ィ'      l   「将軍家指南役の家」として残ったから、
  l、_   /   /,'      l   i    / / ゙、    ,/   剣術の台覧などがあった際には
    `~     ./ ,l     l        / /  `ヽ,__ノ    召し出されて、時服や黄金を賜ったようだよ。
        / /      l     ,i 〈



356やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:09:30 ID:wK+ZuHSZ
          _ - ─ - _
        _ - ´.:.:.:.:.:.:、.:.:.:.:.:::\
      / .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:ヽ.:.:\.:ヽ        あと、ついでにもうひとつ。
       / .:.:.:.:.:.:..:./.:.:,;:入.::ヽ.:.:.:ヽ.ヽ      忠常の代にあった、「二百石の加増」についても
     / .:....:.:.:..:./.:.;.':/ ヽ:..:.!:.:.:.:.l.:.:!      一応追記しておこう。
    ,' .:.:!:.l.:.:___イ.:/;/, -‐‐ヽ:!:.:!:.:l:.:.|
    !.:.:.:ヾト´:/ '//  _,rzxト|/:|ノ:イ:.|       小野家は忠常の代に二百石加増され、
    ,'.l:ト、ベィ卞ォ   孑_,l7:.:.:!);':|:.:!ヽ     八百石の家になっていることもあって
    /.::ト!:`tヘヾニソ  ,   `¨/:.:.:,'.:.:.イ:ハ:.!     「何か功績を立てたのではないか?」
   ,':.:l、:.:.:.:.`ヽ、  -- ‐ /.:.:/.://' リ     「指南役を務めた故の加増ではないのか?」
.   {.lヽ!ヽトー、ーヾ t _ , イ/〆         言われることもあるんだね。
   ヾ  _f´!__ノ    ト--/ヘL__
      /: : : 冫  '、 , -‐  」::.: : : .|        ただ、調べてみると、
     ,': :、: :f- .._   _.. ヽ/:..: : l       この寛永十年(1633)二月の加増は、
     !: : :ヽl_: . : . : .  ̄: . :._..k::/...:|       両番(小姓番・書院番)の「番士全員」を対象に
    |: : : :/: : ̄: : --. .- ´: :.ヘ::::::::|       行われた「一律二百石の一斉加増」によるもので、
      !: : :.!: : : : : : : : 、: : : : :...:!:::::::!       特に小野家に対してだけ行われたわけでは
     |: :.:.|. : .::::::::::::::::;::::::::::::::/:::::::/       ないようなんだ。
.      |:、:.:.l.:..:::::::::::::::;::::::::::::::,'::::::::/
      !:ヽ:.}: ::.:: : : : / ; : : : ;!. .::/         そこを考えると、
     ヘ ./i : : : : : /: : : : /::!: :/         特に何かあったわけではない、と考えるのが
        y: | : : : : : : : : : : : /|:/         妥当だと思われるよ。
     / `ヽ、: : : : : : : : : :,:イ
      人: . : . :` ‐ - - ´: . |           というか、柳生と比較されるから
  _ -´::::/\: . : . : . : . : . : /!ヽ.         過小に評価される事が多いけど、
.r ':/::::::::::::::::/:::┬ ┬::::´:|::::::::::::\       石高は勿論、家柄的にも十分
. Y::::::/:::::/:::::::::::::!::::::::::!:::::::::::::::ヽ::::::::ヽー、    エリートの範疇に入るんだけどね、小野家は。
  ゝ'::::::/::::;:::l:::::::::i:::::l:::::::::|::::::::::ヽ::::::::::ヽ::::>   両番筋(書院番・小姓番から出仕できる家柄)だしさ。
  ヽ_/::::::;:::::|::::::::l:::::|:::::::::l:::::::::::::\:::::::::>´
    T、_:::::::!:::::::!:::::!:::::::::|:::::::::l::::::::> ´  
     '.  ー,_:!_!:::::::⊥_:: ┴T  
      '.       `l         l  
      '.        !       |



359やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:11:59 ID:wK+ZuHSZ
 なお、余談ではあるが、この時、一人の人物が忠明の霊を弔っている。

                               r 、  i'´{
                                    | l. | |   . -,
                            「ヽ | | ! ! , ´ /
                             ヽ丶| l| l / ,
                                ', ヽ! ゙'  ′/  _
                                  l      /レ'´/
                                   |        /
                                 !        /
                               }       /
                                 j      .′
                                   ′   ,
                                   ,    丨
                                ′   |
                             ;       l
                                i     ¦
                             l       |
                               l      l
                                l    ′ i !
                               |     }. ;
                     ___∠二._ヽ、j      i
                    ,. '"´       ヽ:|       !
                , --/  ,、    、   |     i      小野の伯父様ー!
            /  /.〃 /ハ\\..、:ヽ:.、 .:. j        l     どうか成仏してくださいね!
          / ,.' / i { { {',二__ヽ'^ヽヘい::::{丶       |
         /   /〃{ { いヽ〉 "だソ` }   /^ 、\    卜、    この読経、届け!
    、___,,. '/ .:::/小 {V込_   ^´  /  /  ヽ\ 丶. |::::}   銀河の果てまで!!
     `ー/  .:.::{いNヘ.f「りj     /   ヽ :..  \ 丶 ::`ー:':j
.        { イ  .::::::`"::::::ハ ^ ヽ ,. -‐v′ ....:..:..:小:::..  ヽ  `¨¨´ヘ
      j'!  ::::::::: .:::::::::',   マ .'´{.イ .:::;:::::::j !丶:::::...         〉
        V  : .:::::::::::::ヽ、  ヽノ, V´仏ィ1 !:ヘ:::::::::::.... .....:::::/
        } ..:::::::::::::::::::/ >、       / !  V::}\::::::::::::::;.ィ
          厶-‐ ∠⌒ヽ  /::::::>:- '´ /|   v:::::::::::::::::´: !ヽ
        __  厂ヽヽ.:} /   ::::::::::;ハ / .;' /   !::: ::::::::::::: /:::::.',
       _{ ,.\.ヽ::_;ソ ` ー-- ク / ..://:  l:::: :::::::::: /:!::::::::.i
      ,.⊥ \ `フ´/     _,// /,. -‐r':/ .: |:: .:::::::: /:::|:::::::::::l
.     /,.-、 ヽ レ' /  ,. ‐ T´  { 〃: : :.:ノ´  ..:: {::.:::::::::::::::::!:::::::::: |
     {,.-、 丶jノ /  / .-‐--,. ケ´: :´ヽ  .:::_;.イ::::::::::::::::::リ:::::::::::::!
    / ::::冫┘/  j. 〈: : : : ::ヘ:イ:.. : :..:..:.:}-‐'´::!::::::::::::::::::::/:::::::::::::;'
.   (__).イ   l    厶,ハ: : : :.:::}.ハ`ー‐'" ̄冫::{::::::::::::::::::;':::::::::___/
      }   |  / /  ,廴_;.ィリ{`ヘ:::::::... /、::::\::::::::::::::「´ ̄
                 霊峰元奨

 兵庫助利厳と交流のあった禅僧・霊峰である。
実は和尚は、忠明の甥に当たる人物であった(霊峰の母が忠明の妹だという)

 この時、39歳であった霊峰は全国行脚の途中であったが、
忠明の死に際し、下火(津葬祭)の導師をつとめたといわれている。
(なお、霊峰を通じ、兵庫助と忠明に親交があったのでは、という見方もあるが実態は不明)



363やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:13:57 ID:wK+ZuHSZ
     _____
   /.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
    |.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
    |::::::::/ ⌒  ⌒ |     
   |:::::::〉 ( ●) (●)|     …わかり申した。
   (@ ::::⌒(__人__)⌒)   それでは、長々とお邪魔したようですし、
    |     |r┬-|  |    それがし、ここで失礼致しまする。
    \    `ー'´ /     
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.    叔父上、どうかご自愛くだされ。
:   |  '; \_____ ノ.| ヽ i
    |  \/゙(__)\,|  i |
    >   ヽ. ハ  |   ||


       / ̄ ̄\
     / -  - \
     |  (⌒)(⌒) |     
     |  (__人__)  |     はっはっは、久々にお前の顔も見れたし、
      |   ` ⌒´  ノ    邪魔などということもないがの。
      |         }     
      ヽ        }      伊達様にはよろしくお伝えしてくれ。
      ヽ     ノ     _
     _/     l__   / /  「ははっ」
__ゝ_/         ヽノ   ノ
\___ノ'          ノ


 こうして、寛永六年の頃には、
宗矩は一時期の状態と比べ、概ね快復したようであった。



365やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:15:59 ID:wK+ZuHSZ
 だが、宗矩の快復と入れ替わるように、
この年の二月、今度は家光が26歳にして疱瘡(天然痘)を病む。
(寛永五年とする説もあるが、ここでは寛永六年説を採る)

       ______
    ,,..-‐";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;` 、
  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
  |;;;;i "'`~  "`~ `i||i" '' ゙` " |;;;;;;|
  |;;;;|       ヽ`     u  |;;;;;|
  .|;;| ,-;;;;;;;;;;"フノ  ヾ`;;;;;;;;;;;;;;;ヽ |;;;;|
 ,,ト;| ',,_==-、く    >゙-==、 |/ i   うう…アツイゼアツイゼ、アツクテシヌゼ…
 |i 、|   ' ̄"彡|      ||ii  || |
 |'. (|       彡|      u  |)) |
  ! 、|  u   i,"(_ ,, 、,      |" i
  ヽ_|        `         .|_/
   .|゙      、,.--‐ 、,,  u  .|
   .i ゙、    '  ̄ニ ̄     /|
   |   、      ̄ ̄    , ' |
   |  i ` 、    (    , "   |
    |      ` ー---― "|    |
   |  |          i     |

 以前紹介した酒井忠勝の逸話(忠長の食膳をひっくり返す話)も、
この時のものかと思われる。



368やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:17:35 ID:wK+ZuHSZ
 疱瘡は当時、死病であった。
それを、未だ世継ぎの子一人作っていない将軍家が患ったのである。
当然、周囲は大騒ぎであった。

         \               ィ`´ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ      |   ,え゙          r―-、
            \              〃 ._八__、、    |    |  ,.‐-、vヘハノVvヘハハ∠二 ヽヽ           /
   ー` ` ` ` `  \              ル三''′`三ヽ.  l    | //フlul|lu||lu| l∠二 ヽ /         /
   ∠/レ'レ'レ'レ'L.   \           [ ≧|ニ|≦_]~|^)ト、.   | 〈 /'''フ-‐~'  ~'⌒⊂"^ヽ/ ̄ ̄ ̄  /
  /|│|u| _|_|_ 7   |\          | ,-L__」 -、u |ト:| |'''ー |"~ヾノつ へ、U  / ヽu|ヾi_____/
  |\  /    | r.、 |  \     ,.. -┬|l王l王l王l`/ .|  | | |   _||(  o    o ,ノ ||f|-―l l/
  |ニ・〉  ニ・フ .|l6| |    \  ,∧  |├‐┬─‐''′/   || |i'"l~:::l::|  し'| u | `Ju l!'|::::::::/
.  |∠ っ  u  ll,ノ |      \  |  |.|-―l、___/-―┤ .|| |:::::|:::| v ___L,__,.」_u |::|/____
   ヽlニ二二) ./ >‐、l        \ |  || ヽ. /   | |  || |::::|:::::ヽ((三≡≡三) /   _      `i
    ヽ = ./ / ,.ベ\       \   | |  Y。    | |  || |::::|:::::::::::\u、━、 /_ -イi~| | |~ヽ   |
     ヽ_. く / /   ヽ \    _|\_/\_/\_/\_/\_/|___:::::::::::::/ TT l |υl_, -'_フ ヽ   |
        / /      ヽ ヽ   \                  /:::::::/\υ  , -''_~- ''~ u /  |
________________/ 病 死 の ・ ・ ・ ・ ・ ・   \/~ヽゝ|| ||, -ー~ フ ::| |⌒i |
< /l/  u |ハ、     ヽ      〉                       /  |)_ o/u ≡丶o_ ノ  ::::| .|⌒| |\
 レ =、\  _メヽ!ヽ!、   |    く    予 感 っ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  >   |( /,'    U   ( ) υ::| lD | |  |`ー
  |ヽ 。>_  /。 ノ | ,へ |      \                  \__|/,' υ  υ し'   ::::|.|_,ノ |   |
  | u/   ~U~ ┌ ||ビ|| |    /<     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ! !  /_/ __, -ヽ    O  ┌::::||.   |   |
   |/__,ヽ__u |!_ン |\. /  ノ                     \\ ̄| i┬┬┬┬┬┬、 ::::∧  |   |
    |『┴┴┴┴')) |\ l/     ̄|,/ヽ/\/\/\/\/\厂   \|l二二二二二二/::::/:::;ヽ |   |
   ヾ========'/ /             | |∥┃┃│∥ |│ l |     \┴┴┴┴┴'::::/::::  Y      |
     >--― "u /  ,シ^'~'^~''^~^''^''ゞ、   |:l |∥┃┃│∥ |│ | |    _≧ー \≡ υ  ::/:::  /|       |
  /‐/ |\_/    /Y'l'Y'l'Y'l''l'Y'~Y''!  | ||||∥┃┃  │      |   >     \___/:::: /  |     |
..〈  / /| /     c / lυl l lυl | |u l | ||||  │  _    、)ノノ |  ^イイイイイイイ\-‐''"~   /|____,|
  l  ll /,、,、,,    c |二ヽ'___∠二___| | l│|  │ |i┴-、  | |  |  /、\ u  />Z. \   /  |
 .ト、/ ,、,、,、,、;. っ c 「⊂・「^^|二・)|~~~''6|:l:|│|    └‐l  l_,/、|  |  |r==、l  </== 'i iヘ \   |
,/  |   |ァ,,ァ| っ.  └廾┘ └―┘  -|i||:|│  _,r―;rミ巛彡/  | |`ー・   ・― ' |.|ヘ| | \
   | 6 lニコ| っ.     |U '~`υ υ  | || |│  └ヽ/ヽ、|M|ノ     | |∴(__)∵∴ u||.ン |\ \
   Vニニ  ̄ヘ.     c | l三三三三l  | | |i|│ミ`--へ,,/ ̄    |l|  |u(二ニニ二)  /ヽ. |   |"'''‐\
                l  ̄ ̄ ̄ ̄_厂| | l ||│|  ̄ ̄   │┃  ┃|| l| '"|\  ━  /  ヽ|   |   \
                    ̄ ̄| ̄ ̄/ | |l |l |│|∥┃  │∥┃│┃|l| l| |   `r― '"     /|   |     \
                     戦慄する大名家&旗本たち(イメージ図)



372やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:19:43 ID:wK+ZuHSZ
 当然、徳川家の侍医達も全力を尽くした。
(例えば、侍医の一人、岡本玄治が家光に酒浴をさせて治した、などという逸話も残っている)

        / /;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
       /;;;;;/;;;;;/;;;;;;;;;/;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|      上様の疱瘡は私が治してみせよう。
       |;;;;;|;;;;;;;;|;;;;;;;;;/ /;;;;;/ フ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
        |;;;;;;;|;;;;;;;|;;;;|;;|;;/   τ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |      だが、いくら私でも治せないものはある
        |  | | | | |/_ ─-  τ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|     そうだな たとえば上様の衆道狂いなんかはな…。
         | | | | イ (。@)ヽ   ノ;;;;;;;/⌒ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∠___   フフフフ……。
           | |ノ| x ー─    ノ;;;;;;;//^) |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∠___
           |ノ |  X    _(;;;;;;;;;/__ノ__ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∠_____
           (|    X    |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
           ヽ    X   |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
            冫ーヽ  X |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
            冫     x|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
        /⌒ ─────-;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
      /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
    /⌒;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
_/⌒;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
                  岡本玄治

 また、諸大名も先を争って伊勢神宮や寛永時の天海などに
家光の快癒祈祷の依頼を出している。



374やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:21:34 ID:wK+ZuHSZ
 しかし、そのように周囲が全力を尽くしても、なお、家光の病状は悪化の一途を辿り、
遂には危篤状態にまで陥ったという。

                 __ __┛┗
               /::::::::::::┓┏
                _/       ヘ-、
             〈/:::::::::::::::::::::::::::::V/    …こんなことで死んだら、
               /l::::/:::::,'::::::::i:::::l::!:ハ    徳川家はどうなるのよ、まったく…!
               ~|::::l:::::/:::::::::l:::::l::i:!」    だから、世継ぎだけは作りなさいって言ったのに…。
             ヽ:{::::{:::::::::/:::/:::リ
             , ィ ト{八::::/リj/V-、
             {{ | |  `''   | l }}
             {:',|└─‐‐─┘|//
             {ヘ  ̄ ̄ ̄ ̄ / :}
          , -―-ゝヘ  _ノ  {_/ ___
         {   >=入_、____人=<  ヽ
         ヽ 〃   `┴‐┴'´   ヽ   /
          \|   /      ',   | /.∧
            ヾ_ {       }   レ′/団',
            `ーゝ ____」L=‐'  /_長__',

 そこで、一人の女性が再び動き始めた。



376やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:22:58 ID:wK+ZuHSZ
.      /::::r‐…ーt/::::::::/..ィ:::::::::::::::::::ヽ::::ー..、. 、、::ヽ
      /:::::::L-'ニ''7:::::::::/::::::|::::l::::::l:::::::::::::';:::::::ヽ:J:';::::ヘ
.     /:::::::::::r'´ /::::::::://::;rヘ:::|::::::|::::::::::::::';:::::::::';:ヽ';:::::ヘ
      ;':;'::::/rク-/:::::::::/ィ_:/  l:::ト:::::ト::::::::::::::l:::l::::::}:::';::!::::::',
    l::l:/.:'::/ ./:::::::::::;' |:/`ヽ、';:l.ヽ::',ヽ::::::::::|l_Lィ,!:::|::|::::::ハ
.     l::l〈 /::/ /|::::::::::::| ,.|!テュヽ、ヾ.、ヾ:. \;:ィル|:::/::::l:::|:::i::::|    とにかく、こうしちゃいられないわ…。
.   |::|::`::/  ,{」:::::::::::トヽ' { f'^! ハ `  ` ,ィ5ニトl:;タ:;.ィ::::!:::|::::|   なんとしても上様を元気にさせないと!
   |::|::::::|ヽ /:::|:::::::::::|   ヒニソ      bり/rケ<.ソ::/::|:|l:::|
    |::l::::::|::::`:::::|:::::::::::|         、 ¨´〃ヘ_/:;イ:::l::| l:|
    |.ハ:::::|::::::::::::';:::::::::::ト       __ '   〃 ,'-1 |:::;'::l. リ
   |l |::::::';::::::::::::';:::::::::::', ヽ、    ニ´ _,r'`7^!、,'   ,!:/:::;! ,l
.   ||::|::::ヽ::::::::::ヽ::::::ト:',   ` ,、... - 'ス / ,! Y  ノ/l::/ .,'
     |::ト.:::::〉.::::::::::ヽ:::| ヾ、 ′ ヽ / .}/ / .l rレ'/:/ ./
     l:|,ゝ' ヽ:ト:::::::|ヾ、 ヽ、   r' /  /  ハノ ヾノ. /
    ,∠ - .._ 1 ':;::l ヽ    -'7  ´   / /ノ// ゙l
.   /-‐…‐、 `ヽ、 V'  ヽ/ ,l       /-‐'/   ヽ
   / _.. -- 、 \ \    ヽ 'l´|       /一´    \

 家光の乳母、お福である。



378やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:24:54 ID:wK+ZuHSZ
                      ,. ―‐- 、
                   /´`       ヽ、
                      ,'        、} ト.     だから、これから伊勢神宮に行って祈願してくるわ!
.    rr、                ,'    '   ,.イ゙V }   アンタたち、後は頼んだわよ!!
  ,イ川、             ,' .!  ,' .i  〈_,イ「l/     
  |  !」_          / ,'::! .!,': ::! .:.:| ハ〉|     「ちょっ…!お福様!!」
  l  //```ヽ、       l:i::!::! :::l:::l :::l ::::,`:!:i::|
  `ーl_{     ``丶、__ _从{::|:::::l::,':::::| ::::,':::'l::l::!                 ,.┐
     \_          `/ Λ!::/:ノ!::/!::ノ::/ノノノ                 /フ′
       `¨` ー- 、_   / /  ´ ´ ''´ '´7´/´ ̄`¨¨`¬……――''"´`>ーァ'´,イ__
             \! ..___    / /               / /  '´,.-┘
                 ...___   ̄´ /     ___ ___      {___j--‐'´
              |      ̄ ̄´ ´厂 ̄´        ̄`¨¨´
                /         ノ'´
                }___、      |
            /     ``¬―v‐'
            /        ,.   |
          //        /     !
         //      ,'      '、
        / /l         !        ヽ
        \,'|         !          >

 お福は、家光の快癒を願う為、伊勢神宮へ向かったという。
(江戸城内の紅葉山東照宮という説もあるが、詳細不明)



382やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:27:01 ID:wK+ZuHSZ
 そして祈願に際し、お福は一つの誓いを立て、家光の快癒を願ったという。

             /:::/:/: /    ___  \ \  ヽ \
            /::::::/:/::. /;ァ‐ 7 ¨丁 \ \ `<\ \ l  ヽ
           /―=テ^/::. /::/:::::{  {:   \ \. 丶.ヘ  Vー― ┐
             /≦≠ア/::. / ..{.......|::.  |:::.     ヽ  ヽ ハ ',  V≧、___>
         /:/ / ,'. :: l::::::l::::::::|::.  |::::::...     l:. l:.: l: l:  ∨\:ハ
         〆 /\ l::::: |::::厶:::::ハ:  i\:::::..::.  l::.. |::j;ィ|' |:.  l  > \     神様!上様の病気が治るなら、
       / /:::::::/7|::::: l::/  ト{、小:. ! \::.::. iイl:::: /.l |::.  |メ´ l \\   私はもう病気になろうがなんだろうが、
       ∨:::::::::: //|:l :::: l:{ ,.ィ≠ミk\\ヽ   X´;ィ=≠く リ :  |\\ .:\   絶対薬なんて飲まないわ!
        l::l:::::|: //_j:ハ::::::l代〃 :ハヾ ` \、  "f〃下:ハ>|:::::  |、 \\:l
        |::l:::::| { {/│:ヽ:: ', Vヘ:::j.|         |rヘ::j.リ '゙ |:::::  l、}  lヽ/!    それくらいで上様が助かるなら、軽いもんよ!
        |::l:::::|::V !^|::::: \ヽゝ-‐'    ,    ゝ‐-'   |::::  l_ノ::.|: |: l: |   だからお願い!上様を助けて!!
        |::l:::::l::::::: `l:::::: .::::f`〃〃         〃〃  ,'::::  ハ:::. l:: |: l: |
        l::ハ::: !:::::::::::l:::::::: ::ヘ      r‐‐、       /:::: /::  /::: l: l: |
        ヽ! ヽ::ヽ:::::::::ヽ::::: l.\     -‐    ,. ィ/:::: /::  /:::: /:/l:リ
            \ \ゝ :::::: ヽ ::ハ  fヽ、       イ |: /::: イ::  /\/ノ リ
             X ヾ:::::::::lヘ::.ヽ l   >ー<   〃:/ l:: /  /\
          <  \\::::j リ \V l_`ヽ     x‐/イ   |〃 / /\
         {\ \V/゙\フ⌒!==、,ィ=≠/( `>ーヽ{/ /  ス′
          l  \   /  / `〈. ー-v-一/ /⌒ヽ  ∨   / }
            !:   >/ _,/   /¨ヽー-v-‐/〃 \  \_ ヽ <_ /
             |  ̄  {   _ イ  / ヽ  /⌒ヽ  `ー    }    /

 この祈願が通じたかどうかはさておき、
家光が快癒した後、お福はこの誓いの通り、病の際にも一切薬を飲まず、
家光が手ずから薬を与えても、これを密かに吐き出すなどした、と伝えられている。



385やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:28:43 ID:wK+ZuHSZ
 元々、乳母として家光から強い信頼を受けていたことに加え、
このこともあって、快癒後の家光からお福への信頼は、更に増すことになったという。

           /. : : : :/. : : :/__`ヽヽ
.        /   __! /   /´     ! `ヽ ヽ
         ′∠∧! l : : :/ :/. : : :/ : : ∧: i
.         l : : :// l l : : /|/l\_// : /! l : !
       l : :く∧/´!: .::! f卞ミヽ///j/.:l l
       ! l .::. : ヽ、! .:::!  ー′  f_テ/.:/.:l   「一 奥方の儀、御事によらず、外様へ申すまじき事」、と…。
.         l l:::::: .::::l::l:::::l     __′/.::/.:/ 
          ! l:::::::::::::l∧:::!、    (_/ /.::/j/
        Vヽ∧::::l ヽ!  ヽ、_ ィ/!::/
       / ̄ ヽl\   〈 ∧:::/ j/                     ___
       {/`ヽ、    ヽ、 \∨                    / / ̄ ̄
       /    ∧      、⌒ヽ ̄ト、                   / // ̄
        l/    ∧     i ⌒V ! ヽ               / //
      ′/     ! ヽ    l  ̄ ! !/ ∧               / //
       ∨    l l/ \    !   ! !∨ !             / //
      l    ∨    ヽ   l  l l ! {               / //
   __l   _\     ヽ ! / / /  ヽ、   __       / //
  / / ̄| /  / ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ// __/ ̄ / ∧ _   / //
.  l  l  /     /       /´ ̄/´  ヽ`ヽつ! { ̄ーっ`ヽ / //
           大奥法度を書き込むお福(イメージ図)

 この家光からの信頼に加え、家光の母・お江の死と、
正室である鷹司孝子が離縁同然の状態であることも相まって、
大奥の支配者はまさしく彼女であった。

 また、この頃には大奥の制度もほぼ確立しており、
そのために尽力した(「大奥法度」の整備など)のもまた彼女なのであるが、それは余談。



388やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:30:42 ID:wK+ZuHSZ
 そして、時は先に進むことになるが、この年(寛永六年)十月
彼女はあるところへ赴くことになる。

                 Д_____________________Д
                 [[]!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!![]]
               |-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.|
               |.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=|
                  ノ-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.ゝ.
              ノ=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.ゝ、
            キIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIヤ.
           ノ_二三_-==-_─ ̄三─≡ ̄-三==_-二=三≡-_─_二三_-==ヽ、.
          /二=_-三 ̄≡_-==─≡_- ̄_=≡_二三二=_-三 ̄≡_-==─≡_- ̄_=\,,
      ,,_,,,-''''=_-三 ̄≡_-==─≡- ̄_=≡__二三二=_-三≡_-==─≡_- ̄=≡_二三''''-,,_,,.
_,_,,_,,,-'''____________________________________ "''-、,,,_,,_,_,,_
ヽ @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@ ヤ
 `ヽ丶.}{ |艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸艸| }{  /
   \}{ |l|! ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄::┣━Д━┫:: ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄γ∴⌒∴⌒ .;}{./
     }{ |l|!: ::::::::|iiiiiiiiiiiiiiiii|iiiiiiiiiiiiiiiii|iiiiiiiiiiiiiiiiii|jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj|iiiiiiiiiiiiiiiii|iiiiiiiiiiiiiiiiii|ir;(∵ ∴丿;∵;∴ヾ∴ヽ
  γ;;⌒ ノヽ;;);⌒ ヽ|:::::::::::::::::| :::: :: ::::::| :: :::: :::::::||  |__||__||__|  .| :: :: :: :::::| :: :: : (:;;ソ∴∵丿∴ゝ∵∴):∴::∴):
r;;ゞ(;:: 丿;:: ;;;;;ヾ;;),,):.__|.___|..___||=.=.======= |____|____`(∵(;ゝ(:::∴ ソ)::〆:ソ":(∴;(∴;ヾ)
(:: ;;;;ソ;; ) ;::ソゝヾ) ;;):::)==ii==ii==ii==ii==ii==|^|_________|^|==ii==ii==ii(ソ∴∵丿 ∴(;ゝ(:::∴ ソ)::〆:ソ" |;`ベ
(::: :(;;;;;(  ;::). (;ゝノ ::)Y...|| ̄ ̄`゙r| ̄ ̄ ̄/l--------------------lヽ ̄ ̄ ̄|(∴ミ∵丿 ;`ベ∴;(∴ ∴(;ゝ(:::∴ ソ)::〆:
((:::(::;〆;;;ゝ;:: ;::))( ;::),ブ__||_________||________/l----------------------lヽ____(∵ゝ丿;`ベ∴;(;ゝ(:::∴ ソ)(∴ ∴::〆:ソ"ヘ∴;
`ベ(; ゛(;;; (:::: ソ)::〆:ソ|il!li!li|il!li!li|il!li!li|il!li/l------------------------|ヽ (;ゝノ∵∴;(∴)::(:;;ソ∴∵丿∴ゝ∵:(:;;∴∵丿∴;
: : : : : : : : ゝ|;il|!|ソ´~: : : : ; : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : ; : : :ゞ|;il|!|;il|!|/: : : : : ; : : : : : : : :
: : : : : : : : ノ;ハノリヽ_ : : : : ; : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : ; : :ノ;ハノリハノリヽ_: : : : ; : : : : : : : :
: : : : : : : :^"''`"" ^: : : : ; : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : ⌒^"''`"" ^ : : : : : : ; : : : : : :

 御所…即ち、参内である。



390やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:32:22 ID:wK+ZuHSZ
 この参内の理由については、紫衣事件に関連し、
後水尾天皇が退位を仄めかしたことへの対策として、
幕府からの贈り物を届ける際の使者であった、などという話もあるが、
理由はともあれ、一つ問題があった。

 //7ヽ イ : //:_/_.:/ |: :.:|: : ヽ:.:.. : : : : :.. |. l  :.:.:\<二ニ.┬ ´
/イ /イ`:/: :/:l: :/:./`ヽ l: : :ト: : :.:ヽ:.:.:.. : : :.:.l:.:.:|:.:..   :.:ヽーj ノー 二
` /´: : : /: : l:. l /l:/   \ヽ:.| ヽ: : :.ト 、:.:. : :|ヽ_L:.:.:.:.|:...| ドイ ̄:.:|
  L〉: : : l : : |:. |:| |′    ヽヽ  \:.{  \: :イ´l:|:.:. :.:.|:.:.:!:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.l
  |: : : : :! : : |:. :l{   z三ミ 、、 \   \ /ヽj  }l!:.:. :.:l:.:.:l!.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:l
  {/: : :.:!: : .ハ:. :ト  ´  `ヽ  ´  {ー'r_z三ミ、 |:. :.:/:.:.:ハ:.:l:.:.:.:.:. :.:|:.:.!    何で私が昇殿できないのよ!
 /: /: :.:|: |: :..ヽ:ヽ          i   ´    ` j: : /: : /: }/ハ:.:.:. :.:!:.:.l
./ /: :.:小 :!: :.:.:.:ヽ:\   /⌒ ー--、‐ 、    /://:.イ:.:.:/:.:.:.:.!:.:.: : ト:.:.l
':/!: ::. :.|:ハト: :.:.:.:.:.:ト.ー  /         \i   /イ:.:/´:.:|:.:/:.:.:.:.:.:|:.:.: : | l:.:l
/ | : :.:.:.l:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.l:.:\ {         j   /:/:./:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:l|:.:. : l !:.!
! !: : :.:.:|!:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:l´ノ \ー-  ___ノ  .イ:/:./}:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:./|:.:.: :l j:リ
| ,.ゝ---― 7´: \:.ヽ   ` 、 ‐ _ .. .<_:.:.:./:/:.j:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:/ !:.:.:/ //
イ        { : : {  \ヽ      ̄/ ヽ:..:..ヽソ/:.:/:.:./:.:.:.:.:.:.:.:/  j:.:/ /´
       ヽ: :\   `\     {   〉:../´ `7:/- :._:.:./  /´

::::::::::::::::::::\::::::::::ヽ:::::::::::::/:ヽ
――::::、::::::::::'::,::::::::}:::::::::,:'::::::}
::::::::::::::/ > 、;; ;;ヘ;;;;'::::::::;ヘ:::::〈
::::::、-'//    ,':/  `""ヾ∨:ヘ
:::r ' |::!   |::|       |::| }::ハ
::>  」::|_   i!::!      _!」 !ハ}:|
/   レ' ¨"≠レゝ  / リ/ j/
    "モテエ    ,'ェァ /      いやだって、お前、官位も何もないだろ?
            、   {      武家の娘なんだからさ。
   u        ヽ |
i            _ノ /
ヽ     ,  ____  /
 \    ` ー--- ' , '
   ヽ       /
     ヽ __ノ
   三条西実条
 (武家伝奏・内大臣)

 お福は無位無官…即ち、昇殿する資格がなかったのである。



391やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:34:34 ID:wK+ZuHSZ
     / ,. - fォ   l j    |   、      ヽ、   、  l. l.  `、ヽ \. l
     r' ´ ,.ィ' |   l |   ハ   l          l.  ト   l. l、  l. ヽ--' l.
     lヽ∠/  j   | |   | 、  ト、       l   l ',   |_ l.  l  _ン   !
.     |  〈   lj   トA._ | ヽ.  ', \       l  Lx‐''ハ |  hヘ ヽヽ |
    |  /7-/ l   | | ヽ`'''ト、 \  ',. \    ,.ト'´|  l | ||  | l l. ', ヽ |    何言ってんのよ。
     |  / ,' ' ハ  | l. ヽ l. `ヽ、ヽ、 '、  `ヽ/ N-=リ=、|ノl   | l. l ', ',|   私はアンタと同じ、
.     | ,' l. / l 〉.  N ,ィz弋ドヽミ` ヽk、   `イo,...、 l`レ l   |. |  | ', ',   三条西家の血を引いてるのよ?
   | l l. l  | /∧. l Y/仏'f¨ヘ. l`.        仆{__ソ,ィ|  |   「`l  |  ', 〉
    | ヽ」 l  | l l ゝ ',ヾ、'ケ、ヽイ,t|         'つニ'ゥ′ l.  l.  } 」   l´|   つまり…手はあるってことよ!
    | |  ヽ」 | | | iヘ ヽ `乞ニ-┘    l       ̄    !  l ノl'´   l.|
   | |     | | | l、`ヽト.ヽ              ,      ,'  l ´  |    l.|
   ||   lヽヽ丶  ` ミー    ー一…… ´     ィ  ,′   !   l |
.     ||   l. ',       ヽ、.._             ,// /    /   l. l
     | |、   ', l、           `ヽ、       ,.-' / ,イ    /    j. ′
    l |ヽ  、 ヽ \           ヽ   , -' |ー、/,r'/   /   〃 /
     ', | ヽ ヽ  ヽ   ヽ、         lー ´   l ,シ^ソ  /     // /
     ゙ヘ. ヽ ヽ  _,.ゝ  〉-`ュ、     ノ      '1 |  /ー- 、_// ,/

::::::::::::::::::::\::::::::::ヽ:::::::::::::/:ヽ
――::::、::::::::::'::,::::::::}:::::::::,:'::::::}
::::::::::::::/ > 、;; ;;ヘ;;;;'::::::::;ヘ:::::〈
::::::、-'//    ,':/  `""ヾ∨:ヘ
:::r ' |::!   |::|   u.   |::| }::ハ
::>  」::|_   i!::!      _!」 !ハ}:|
/   レ' ¨"≠レゝ  / リ/ j/
 u.  "モテエ    ,'ェァ /     …お前、何考えてんだ…?
            、   {    血を引いてるったって、遠縁もいいところだろ(※)
   u        ヽ |    
i            _ノ /     つーか、なんだか猛烈に嫌な予感がするんだが…。
ヽ     ,  ____  /
 \    ` ー--- ' , '
   ヽ       /
     ヽ __ノ

 ※ お福は実条の先祖、三条西公条の玄孫であるという



394やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:36:29 ID:wK+ZuHSZ
                    /__/  /  /  '  l     ,   ',\ヽ ヽ ヽ
             /`!    /´_/  / ./!  !   !     ',.  l .:.l`|  .:ト、',
             | |   / / ,'  /.:./  |  !',  ',    l  :|..:.|.:|  .:ト、\
             | |   ∨/|  :!.:/ ̄`ト、:! ', .:.:',  , 斗‐┼┼|  .:|、\ 〉
         ,.-、 | |   /\_」 .:l:,'    ! .:.|ヽ', .:.l∨ .:| :l.:|.:.:|.:|  .:| \У     簡単なことよ!
       r‐| _ヽ,! |   ,'  / ,| .:.:!{    ヽ:{.  ヽ、', \.:|:ノ//l |  .:|__〉|     アンタ、今から私の兄になりなさい!
     /! !〈 ∨ |  ,  / ,ハ .:.', _,,.___,,二    ``二,,_.,,_ノ.:|  .:| |、ヾ     そうすれば、私も三条西家の娘ってことよ!
     ! '、 ヾ、\|  !: / // ,l\ヽ ´¨¨´   '       `¨¨`ノ:,' .:.:.,'! !:\\
.     \ \_ト}  `{  |:.l l l { !.:.:.\、    l二二二'、     / .:.:./:| |.:l.:|l }    これなら大丈夫でしょ!
       | `¨´/  | |ト、j|`!.:.:.:Λ`   ',     /     ' .:.:./.: | |.:l.:|| /   当然、拒否権なんかないからね!
      ',  {     !  |:.| N.:l:|:.:.:.l:|.:\    ヽ.__/     ,. / .:.:/ .:. レ': l.:|`    「お・に・い・さ・ま!」
     ┌ゝ、__   ノ、  ',:! |.:l.:l:|:.:.:.l:|:.:.l:个 、       ,.ィ'´:/ .:.:/.:.:.: /.:. j.:|
     ト、.___ ̄__,'   ヾ ',.',.!:', .:.l:|.:.:{: l/|` ー‐ '´ 卜/, .:./.:.:.:, '.:.: /}.:!
    __j`ー----‐/    \ヽヽ.\:{>'´ /ノ       _///.:./.:.:. / 〃
    「  ヽ、__ ______{   , ー厂 ̄´\`ヽ. ,'        __/´//\:. //
    |          ヽ. / |      ヽ  ,'   _ ___  | '´   `¬ー 、
.   j             〉′  !        } ! ̄      ̄`|           「ヽ
  /            /   , l       |          |            |  ',
. /            /    l !       |         |           !  ',、
 !            /    l ,ハ.        |         |            /    !\

             /
            ,/=''-''''--=、
          _,,/" ヘ/l /=='-、_ て
          ll //、//"'-'l .lヽ=- l そ
         l" /r,,,=ヽ  l/. ll .,、-l 
        /、{ '"'' / '-,,< /-/    って、げええええっ!
        ヽ.{  __.l  ^"'' /_ /'   そんなのアリかよ、おい!
  _,,_     __.{ ./'''''^',   /@/
 ''"  "'''=-'"  .ヽ'''=、/_,,=-'''''"
     l    、\ヽ''''"/ 、
 ヽ  . ヽ   l  ヽ/-< /、<
  \___,,_\  }  ヽ<l l-"、"''<
   __,,,..."'   ヽ、 ヽ、ヽ} > ヽ、
        _,=. ヽ,  ヾ 、 { .l  lヽ
      -='"   ヽ,  .} l } l--|-''' 、
            l  }l  }l N.l  "、

 こうしてお福は、縁のある公卿・三条西実条の猷妹となることで
昇殿する資格を得ることに成功する。



396やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:38:06 ID:wK+ZuHSZ
 |\ヽ、            __
 | ヽ、 \       ─ /__.)─ 、
 \ヽ   \   / __      \       _
   ┘ / ̄ ヽ/ /───ヽ\     \  / ̄  \
   \//   //__108__ノヽ\    │ / / / ヽ、 |
     |l    | |l M I  Z  U  l |     | |_ | |   |  |
     \ _|、ニ______ノノ     | ̄ \ ノノ /    まーおみゃーさんも
      /             フ| /ニ--、    \/   遠いところからよくきたがねー。
      >‐--ニニニニニ‐ ̄l | | /   /、 |     \
     / | | |   || | |    | |. | | | / | | |      \  朝廷名物、ういろうでも食わんかね?
    /   \ヽ、_ノノ_ヽ、   // | | |  |ヽ//        ヽ、
    /  /   |二/二\─''" /  \─''/  /       |
   /  /   /  ̄ \ | |   /   / / /         |
   |   |    |‐‐、ヽ   |‐_/─/ / /            |
  |   |    |\ヽ | | /──    / /  |          |
  |__|     l\ニノ   \\   / /   |          |

          _,. 一…ー- ._
       ,.r ´   __   \
      /    / '´___`丶、. ヽ
.     /  ,. /  '´     `丶ヘ  ヘ
    /  ,./ f / ,ィ' |        ! | |
.    ' <,/|  | l| / | l|    |  |  | N
    | /7 |  | 」 / | l|\  |、 |_ | |'|
    | | | l|  | ハト、_ヽ!  \l. x1| | / |    はあ…。
    | L|(|  | |'亡'ナ`    千t十! ル | |   (朝廷名物って何…?
    | l.| Ll|  N      、  ̄ |'|1 !    ってゆーか、なんで帝が名古屋弁なの?)
    | l.l  ヽ !\    ,.-、   .イ / イ/
    ヽハ、| \ゝ|` 、   ̄_. ´/ へ'._′
    /{ | N、 !  l!   `¨´| レ′|.|.ト、
      |.| | ヽ|  l|>──<l     |.|.||

 こうやって朝廷に参内したお福は、後水尾天皇や中宮和子に拝謁。
そこで天杯を賜り、また従三位の位を受けることになる。

 そして──



399やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:40:37 ID:wK+ZuHSZ
   ,.r''´::::::_;;:-‐-ヽヾr゙;:-‐'''''''‐-::::、;;;;;;\
. /:;r´;;;/::::;r''´_;;;;Y´::::::‐-、`ヾ、::::`ヽ;;;;;;;ヽ
'::::::::;r''゙:::::;;:-'''´      `ヾ 、:ヾ\::ヽヘ;;;; \
:::::/:;;-''´            ゙ヾl、:::ヽ::゙ヽヾ;;;ヘ.                   ....、
::/;/´  _,,..--7''´ ̄`ヾ''- 、.   |::::::ヽ:::::゙;l;;;;;;;ヘ.                 "! "L......、
/  _,,-'7::::::::::/::::::::i:::::::::ヽ::::::`ヽ、 |:::::::::l:::::::;;l::;;;;;ヘ.              ..ェ;ヒ’ ..rゥ'ヒ′
 / :;イ:::::::::::/::::::i::::|::::::::::丶:::::::::::ヽ.|:::::::::|::::::;;;l;;;;;;;ヘ.              _..-┘ ニゝ-(__
'::/::::::/|::::::::::λ:::::::|::::|:::::::::::::ヘ:::::::::::::::|::::::::::|:::::;;;;|;;;;;;;;ヘ            __ニ フ '―'''エ__フ
:/:::::/ |::::::::::::| |::::::::|:::::l::::::::::::::::l:::::::::::::|::::::::::,r''ヾ、l;;;;;;l;;;;l           'ゞ一ト /``⊂ゝ、
|::::::| .|:::::::::::| l::::::::|:::::ヘ:::::::::::::|l:::::::::::|::::::::::/lヾ: ヾ;;;;;;|;;;;|            _/ _'ーコニ「  _ ゛ゝ、__
|:::::|,,_ .|::::::::::|  l::::::::ト::::丶::::::::::|.l::::;;:-|‐''':::/  |ヽ. ヘ;;;;|;;;;|          ,..彡'│ 辷コ { ゙ゝ---┘
'|::::| `゙ト:l、::::|. 丶:::::lヾ:;、ヽ:::_;;:r'|´:|::;|::::::::l.  ト、l  ヽ;|;;;;;|         '' ̄ │ 「--ノ |
ヘ:::|. _,, ヾ:、:::ト、. \:::l ヽ,X´:::::|.|:ノリ,|::::::::゙lヽ、 | ゙|'´|`;;;|;;;ト;|           丶广"ゝ丿
|.ヾ|r´.二ミト、:| ゙  \::、 へ >、,,ィ=二ミ.、::::,|r‐、 |;;;| |;;;;l;;;;| |l
ヽ〈r1::o;;;;;;;`ヾヽ    ヾ  ',イl´;o;;;;;;;;;;lヾ〉::ト ゙ } |;;;| |;;|;;;;;| |:l             __,,..---、
ヾ.ヾ.l::;;;゜;;;;;;::|         .l::;;;;;゜;;;;;;;l:/'::::| ',:ノ |:└┘|;;;;;| .|:l         :{''''>‐‐''''1 |
:::ヾ ゝ´)::''ノ'         ゙´)::::''ノ:::::::::::}ノ;| |;;;;;;;/ |;;;;l |::l         |  !  _ ! |
|::::ヘ ,.r'1''''´           `゙'''/::l:::::::::::|;;;;;`''´;;;;/,,_ |;;l  リ         | '七ニ..ゞ卜│
、:::/ ノ              /:::|::::::::::|;;;;;;;;;;|;;;;/=‐-..,ニ=,,ニニ=..、    .| |    .| |
::/  .∧     .,,_  `´  _,,..  /:;イ:::::::::/;;;;;;;;/l;;;/゙ヽ.、_`゙''‐--‐''   ゙ヽ、  | ヽ--‐-││
/  '-‐゙丶、    {゙゙''''i''''゙゙l  ,,/:::/::::::://;;;;;;//;;/: : :,r'´;;r'''‐- 、ノ'',´_゙''_´   ゝ/'' ̄"\ 丿
     ヾ、;;ヾ‐- ,,゙_‐-‐゙.,,.-''./:::/::::::::;イ;;;;;/,.:/  /:::/´ / `,ヽ、/ヾ::::`゙''‐-       ̄
''゙´`゙    ヽ;;ヽ  ヾ''''´  ./:;/:イ:::::/i;;;;/    /:::/ /  /   \::ヾ::::::::::::
_,,,,,,_     ヽ::ヘ ヽ   ゙-/ '//ノ;;;/ .|;;|     /::/ / ./      /::::::::::::::
_,,,,,_ `゙ヽ.   ,r }.l:| ゙  ノ'.-/' /;;/  l;;l    /::/ / ./       /:::::::::::::::
_:::::::`:ヽ、゙''.ィ'ノ1 ' `゙''''゙´ ,/' /,イ.   ヾ、  /::/ / /.      //::::::::::::::::::
 `゙ヾ 、:::ヽ/  |` ヽ、,,_ ,,-ン' .|       ./::/ ./   /  ./ ./:::::::::::::::::::::
''‐-,,,,,,_ ゙ヽ|  ト、   ´   ,, イ      /::/ /  / ,,.-''´ ./:::::::::::::::::::::::::
.  l''´ ゙'∧,  |  ゙ヽ、,,_,,-'',´ |      /:::/ /  ',/´   ./:::::::::::::::::::::::::::;
    / /  |  | .l  /  l     /:::/ / /,,..,,__ ,,.-''´:::::::::::::::::::::::::://
  /  ,イ.    |  ∨  .|  /     /::::/ ./ / ∧ /´;;;_::::::::::::::::::::::::;/-‐
''゙   λ:ヘ.    |    |  ./    ./:::/ ./ / ,/ ゙'''゙´ ,/ ̄ ̄ヽ,.-''ヽ.
.   ,ィ{丶::ヘ.   | _,,..ヘ、_/    /:::/ /  イ |   ./
  ././. ヾ丶ヘ   |lllrlll'゙>ll'    /::/ /  ././ |  //
. / ./   ヾ.、:ヘ   |lll lll'イリ  .// ノ ./ /  | ィ' ./
' ∧    ヾ.、:ヘ  |》 ll |/ // ./  // /  / .| |

 この時、彼女は後々までそう呼ばれることになる「春日局」の称号を受けたのであった。



401やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:42:57 ID:wK+ZuHSZ
 さて、ここで話は柳生家に戻る。
宗矩の快復と入れ替わるように家光が疱瘡にかかったことで、
当然、その間、家光への剣術指南としての勤めは止まることになるわけである。

 ゙̄''ー-、.._                                _,,-―'" ̄
       || ゙̄''ー-、______________,,-―'" ̄
二.二二二二i===||________,| |              | |
    ||    ||;; |  | | ̄ ̄__i__ ̄ ̄| |―┬―┬―┬―| |  |\
    ||    ||;; |  | |   |  |:   | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |  |  \
    ||    ||;; |  | |   |  |:   | |.  i i        | |  |   |
    ||    ||;; |_| |   |_|:   | | (_;;).       | |  |    |
    ||    ||/ /| |         | | ̄ ̄ ̄| ̄''''――| |  |    |
    ||    ||/  /三.三.三.三三|_|―――|゚____,|_|   \  |
    ||    || /                       \  \|
    ||    ||'                             \
//||   /                               \
//|| /
//    / ̄ ̄\
/    /  _ノ   \
     |   ( ○)(○)l
    . |    (__人__) |   もし、上様に万が一のことがあれば、
      | U  ` ⌒´ |  それこそ一大事だろ、常識的に考えて…。
    .  |         }
    .  ヽ        }
       ヽ     ノ
       /    く
       /     ヽ



404やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:45:47 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\
  /  _ノ ヽ_\      もし、斯様なことになれば、誰がどう動く…?
 |     (○)(○)     忠長様か、さもなくば尾張の義直様、紀伊の頼宣様か…?
. |     (__人__)    
  | u   ` ⌒´ノ ) ;;;;)
.  |         }  .) ;;;;)
.  ヽ        }  /;;/
   ヽ     ノ  .l;;,´
. /    ∩ ノ)━・'
 (  \ /|_ノ ヽ
. \  ""  /_ノ  |
   \ /___/


   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)   …どちらにせよ、上様が亡くなられれば、
 |    (─)(─)  /;;/   柳生家とてどのような影響があるかわからぬ。
. | u.  (__人__)  l;;,´ 
  |     `∩_ノ)━・'     何卒、御快復されんことを祈るばかりじゃ。
.  |  u.  .|_ノ       我が家からも、せめて快癒祈祷の依頼を出さねばな…。
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |
 | \ /  _/

 この家光が病で命に危機にあった際、宗矩がどのように動いたかは、
記録が残っていない為、不明であるが、おそらく、諸大名や旗本たちの大勢と同じく、
快癒祈祷の依頼などを出していたのではないかと思われる。



407やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:47:03 ID:wK+ZuHSZ

        / ̄ ̄\
      /       \    そして、無事に快癒されたならば、
      |::::::        |  その時、わしにできること…それも用意せねばならぬな…。
     . |:::::::::::     |
       |::::::::::::::    |          ....,:::´, .
     .  |::::::::::::::    }          ....:::,,  ..
     .  ヽ::::::::::::::    }         ,):::::::ノ .
        ヽ::::::::::  ノ        (:::::ソ: .
        /:::::::::::: く         ,ふ´..
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ――
         |:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´



408やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:48:52 ID:wK+ZuHSZ
 そして、家光の病状も一通り落ち着いたと思われる同年三月、
家光が病に倒れて以来、久しぶりの稽古の日…。

         / ̄ ̄\
       /    \ /\
       |    ( ●)(●)
       |     (__人__)    上様…お体の具合は如何でございますか?
         |     ` ⌒´ノ
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.

             __
          ,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
       /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
      /;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
      ,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
      |;;;|      ノリ     ミ;;;|
     _ゞ;! r─-- 、  ,rェ--- 、ミ;リ     ああ、まだ体力が快復しきってないようにも思えるが…
      !ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ    まあ、もう大丈夫だろうという話だ。
     !(,ヘ!   ̄'"  |:::.`  ̄  ,ドリ
     ヾ、!      !;     ,レソ     これで、また剣も振れるってもんだ。
       `|      ^'='^     ム'′    なあ、宗矩?
       ,rト、  ー- ─-:  /|
    _../ i| \   ===   ,イ.:ト、
    /  i| ゙、\  ;   /リ.:;!:::\、_
       ゙!  ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
        ゙、      :::/::::::|::::::
    `ヽ、  ゙、     ./  .|  ,-、、



410やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:49:49 ID:wK+ZuHSZ
         / ̄ ̄\
       /    \ /
       |    ( -)(-)
       |     (__人__)    …………。
         |     ` ⌒´ノ
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.


    〃                 i,
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
    !  :l      ,リ|}    |. }
.   {.   |          ′    | }
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
    !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|      どうした、宗矩?
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|     早く始めようじゃないの。
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ
.    }.iーi       ^ r'    ,'
     !| ヽ.   ー===-   /
.   /}   \    ー‐   ,イ
 __/ ∥  .  ヽ、_!__/:::|\



411やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:51:23 ID:wK+ZuHSZ
         / ̄ ̄\
       /    ⌒ ⌒
       |    ( ⌒)(⌒)
       |     (__人__)     …上様。
         |     ` ⌒´ノ    それがし、本日、上様にお渡ししとうものがございます。
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.

     ,, - ―- 、
  ,. '" _,,. -…;   ヽ
  (i'"((´  __ 〈    }
  |__ r=_ニニ`ヽfハ  }    ほう、それは一体なんだい?
  ヾ|!   ┴’  }|トi  }
    |! ,,_      {'  }
   「´r__ァ   ./ 彡ハ、
    ヽ ‐'  /   "'ヽ
     ヽ__,.. ' /     ヽ
     /⌒`  ̄ `    ヽ\_
    /           i ヽ \



412やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:52:59 ID:wK+ZuHSZ
                             |. `|  |  l  l.  |
                     「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |  ,' / ノ ̄ ̄|
           / ̄ ̄\     |         ヽ_j  / //    .|
          / ノ  \ \   |          ヽ_ハ/′      |
          |  (●)(●) |   |                   .|   …こちらでございます!!
        . |  (__人__)  |   |       新陰流印可        |
          |   ` ⌒´  ノ   |     ・・・ ・・・ ・・・       |
        .  |         }   |     ・ ・ ・・ ・・・        |
        .  ヽ        }  /|                     |
          .ノヽ     ノ /l|.| :::::::::::::::::::::::: .|
      ヽ、--ー、__,-‐´イ   l リ| :::::::::::::::::::::::: .|
        >'´/ / _,.ノ|/    l. .| :::::::::::::::::::::::: .|
      ,r7′_,.レァ‐‐'′、 l  i  l |              __    .|
     /,厶イ_:.:/    ヽヽ. :l   |            〃.  `ヾ   |
     /7   /:.:「       ゝL/ |   ::::..... |l. 宗 ||   |
   /〈  /:.:.:.:',    /  //   |   ::::        |l 矩 l.|..   |
  ∧',. ヘ /:.:.:.:.:.:',  /   〃   |             ヾー-‐シ    |
_/ ヽヽ V:.:.:.:.:.:;.イヘ     トr'′  .!                ̄´     |
  `ヽ >、フ:.:.:.:/:.:./     l    └─



414やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:54:45 ID:wK+ZuHSZ
\\ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::
  r'::::::::::::::::::::;;:;;:;;:ッ、:::::::::::
\ レ''''jrTf"    lミ::::::::
   |        〈ミ::::::::
\ |、_ ャー‐__二ゞ ヾ::、      宗矩、こいつは…!
`` ゞ:}   ̄'互.ヾ  }:j ん
   l/   """"´`    )ノ
=-- /           l  (ノ
== `弋"__,....._     !  !
     ゙、`ー‐'     ,'       \
''"´    ゙、 ̄    / ,'         \
/     ヽ__/::;' ,' ノ       `ヽ
  //      ヾ_,'∠..,,__
// //   /´


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)
. |     (__人__)     はい、新陰流の印可でございます。
  |     ` ⌒´ノ.   それがし、上様にお仕えして新陰流を御指南すること九年、
.  |         }.    既に剣の上で、上様にお伝えすべきことは全てお伝え致しました。
.  ヽ        }.
   ヽ     ノ
   /    く
   |     |
    |     .|



415やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:56:25 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\
 / ⌒  ⌒ \
 |  (⌒)(⌒) |  
. |  (__人__)  |     …故に、ここで上様に我が新陰流の印可を献上致します。
  |   ` ⌒´  ノ
.  |         }
.  ヽ        }
   ヽ     ノ    
   /    く  
   |     \
    |    |ヽ、二⌒)

    〃                 i,
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
    !  :l      ,リ|}    |. }
.   {.   |          ′    | }
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
    !∩|.}. '___゙`   ./'__` f^|     そうか、遂にこの俺が印可を。
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄' |l.|    …死の淵から蘇った甲斐があったってもんだな。
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ
.    }.iーi       ^ r'    ,'
     !| ヽ.   ー===-   /
.   /}   \    ー‐   ,イ
 __/ ∥  .  ヽ、_!__/:::|\



418やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 22:59:26 ID:wK+ZuHSZ
       (⊃ ̄ ̄\
     (⊃   _ノ  \
    (⊃   ( ●)(●)      しかし上様、剣に限らず、芸というものは、
     |     (__人__)      弛まぬ稽古あってのものでございますぞ。
     |     ` ⌒´ノ
       |         } \     たとえ印可を受けられても、
     /ヽ       }  \   .それだけで満足してはなりませぬ。
   /   ヽ、____ノ     )  そのこと、お心得くださいませ。
  /        .   | _/
 |         / ̄ ̄(_)
  \   \ /| JJJ (
   \  /   /⊂_)

    〃                 i,
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
    !  :l      ,リ|}    |. }
.   {.   |          ′    | }
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
    !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|    ああ、もちろんだ。
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|   これからも頼むぞ、宗矩!
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ
.    }.iーi       ^ r'    ,'     「ははっ」
     !| ヽ.   ー_ ‐-‐ァ'  /
.   /}   \   二"  ,イ
 __/ ∥  .  ヽ、_ __/:::|\



421やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:02:46 ID:wK+ZuHSZ
             ___
           ,ノ' ´    ` ''ヾ、
         /            ヽ
        }f^'^^了t^'^'`'ー1  l
        |L_ ! ___ { ,..、|
         }f'tr'i  ''^'tォー` }j/i',|      …いいこと思いついた。
          l.| ´ |    ̄  vijソ.!      宗矩、早速これから俺と立ち合ってくれ。
         丶 └、     Fイ l′    .俺の腕前を試してみたいんだ。
     /    ',  ‐--‐  ,イ ケ|
   , ,/.       ヽ `''"´,/ !  ^|ー、
  / /      _,,」、'....ィ'       '|. \、_
. /./  ,. ‐'''"´    ! /   ,  _」__ヾ',
.,'.,'  /´   └ 、_ ノi   ノ  (、_  ``ヾ!
,'/ /     ヽ、 ` ''ー 、ィ-─'' r`'^    `
l|  !            リ    `ぅ ー=、_
| |          サ     〉
  ト             ′    ./''ー- 、,.._
  |  ヽl            (B     /    ヽ、
  |     !,、      !     /     ∠_
  ,イ     ヾ'     ィ 、   . /   ,,ィ'´
        ゙、      :::/::::::|::::::
    `ヽ、  ゙、     ./  .|  ,-、、


         / ̄ ̄\       上様、お戯れを!
       / _ノ i||iヽ、_\.     病み上がりに激しい運動はお避け下され!
      .| (○) (○)|    それに、それがしは既に59の老骨でございますぞ!
      .| ||i (__人__)l_j|   
/⌒)⌒)⌒.|   |r--|   |   /⌒)⌒)⌒)
| / / / | U.|   |  |  / / / / /
| :::::::::::(⌒)|  |   |  |ゝ⌒) :::::::::::/
|     ノ \ └ー┘ / / )    /
ヽ    / /       \ヽ /    /



423やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:05:47 ID:wK+ZuHSZ
         _,r'´::::::::::::::::::::::::::`'、.      /
        {::::::::rr-‐-‐'^i::::::::::::::i.     !
         ゙l'´゙《   __,,,ゝ:::r、:::::l     |    俺は年寄りのノンケだって
         ト=r;、 ゙"rィァ‐リメ }:::::}    ヽ  構わないで立ち合える男なんだぜ?
          ゙i`"l   ̄    ソ::::ヽ    l′
          ゙i. ゝ^   ,  /ヾヾヾ、   ヽ,  さ、宗矩、さっそくヤろうじゃないの。
           ヽ ゙こ´  /     ヽ、   ∠_
            ヽ、  /__,∠、    `'-、   ^ー――
             `゙ク'゙´   `    ゙'、 ヽ
              /           〉 ヽヽ
            ィ               ヽヽ
         _,,-'´:::                 ゙i
        /    `                  }
      /         ,-ィ‐r'´´      /   l
   __r'〈      ,ノ   / ```l       /     l
-‐ ´      ‐ '' ´  /l:::    l     ー'´      l


     //            //  そんなっ…!
    / / __,‐⌒ヽ、       //  バカなっ…!  バカなっ…!
   / / /   '─ \    / /   常識外なっ…!  ありえないっ…!
  //ノ ノ-、 (○つ\  / /   59歳で…!  こんなことがっ…!
//  | 。(○)  、゚ ヽ, ヽ l l   どうして……  上様の指南役…
/   ヽ Uヽ__,,,トー'i   )| |  あってはならない……!  常識的に……!
      ノ    ` ⌒''  ノ | |  どうして… わしが…
    (           } ノ ノ  こんな… どこだ左門…
     ヽ         //  こんな…
      ヽ      //      こ ん な こ と が っ … … !



427やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:08:26 ID:wK+ZuHSZ
               _,,-i、
              _,,―''"`  ゙l,                        __
        _,,-‐'″      ゙l、                         /| `゙'''ー-〟
    ,,,,-‐"`         _   |、                     ,i´l゙     .l゙
 .,,-''"`       _,/"|   ,li、                       丿 .l゙     ,l゙
..〔       _,,,-'"゛  .|   ,"|、                     ,/  │    │
 `ヽ   .,,-'"` ,,,-, ,l゙   │ ゙l、                 ,/   ,|    ,i´
   ヽ ,/  ./′ ゙ッ′  丿  .゙l                 ,/   ,l゜   │
    ゙'ヽ、   ヽ      .,/_,,,,,,,,-←i、  ,,-‐i、         丿    l゙    ,l゙
     `'-,、  ゙i、   .,,/` ゙l  |  .゙l  ゙l  ゙l .,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ィニ,,,,,,,、 .|   ./
       `'-、 ゙l   ゙レ、 ゙l  .゙l  .゙l  |  .| .l゙゙l             |  .|   │
         `''-|    | \ │ .゙l  ゙l .|  .l .| ,←―――――-r",,-“',,,Z″
          /    |  `'i、l,--←'''''゙l /  .l│l゙        ,,-ンシ广゛ l゙
         丿    .|   ゙'ミヽ.__,,,,-'"  .,iト|│      ,,/ンシ'゛ .l゙   .|
           ,i´    /     `!|、    ,l゙l゙|.l゙     ,,r'/シ'".,,/゙~゙゙二''"
         `'ヽ,、 .,/       ゙゙l,_,,,,-''"` ||,l゙    .,,/゙lソ'゙,,-'"_,,,-‐'″
           `'ヘ-,,,、      `'i、   ,lリ   .,,,ji!'彡‐,ン‐'"
               `゙''ー-_   `ヽ  .l|" ,,,il|リニン''″
                   `゙'''ー-,,,,\ ,リ,,,終゙‐'゛
                        `゙'"゙'゙″

 こうして、寛永六年(1629)の三月、宗矩は家光に新陰流の印可を与えたのであった。



428やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:09:57 ID:wK+ZuHSZ
            _ ......-.―.-..、_
       ,..:.:,.:.: ̄:.:.:.:.:`:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:`ー..、
     . :':.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\          というわけで、
    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ        この頃、宗矩は家光に印可を与えたらしいね。
   ':.:.:.:.:.:.: i:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.ヽ:.:.ヽ:.:.:.、:.:.:.:.:ヽ
  /:.:.:.:.':.:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:. ハ:.:.':.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:',        「らしい」というのは、
  .':.:.:.:.:i:.:.i:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ト、:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.: ハ:.:l:.:.:.:.:.:',:.:.:.:.:'      この時、宗矩が家光に与えたという
  l:.:.i:.: l:.:.l:.: !:.:.:.:.:.:.:.:.: l _ヘ-‐―-:.:.:.:': l、:.:.:.:.:.',:.:.:.:.l      印可状は残ってなくて、後に家光が宗矩に与えた
  l:.i:i:.:,l-┼‐-、:.:.:.:.:.:.: l  ヽ:.:.ト、:.:.:.:.:.l:.l:.',:.:.:.:.:.!:.:.:. l      返り誓紙が残っていたから、
  l:.i:i:.:.:l:.:.ヾ:.ハ:.:.:.:.:.:.:.:.! ,.ィ=≠ミメ:.:.:.:.:.ト:!:.:!:.:.:.:.':.:.:.:.:l      そこから推測するに、この頃に少し前に
  l:.i:i:.:.ハ:.:.:.!ィテヽ:.:.:.:.:'  γ':::::::::!〉:.:.:.:l:.!:.:.!:.:./:.:.:.:.:.:!      印可が出されたのではないか、というところなんだ。
  レl:.i、:.:丶〈 r'::::i \/  弋:::::シ.!i:.:.:.:'l:.:.:.:!:.':.:.:.:.:.:.:、ヽ     まあ、二月は家光が疱瘡で倒れていたわけだしね。
   !ハ:.、:.:.ヾ! ゞ'ノ  '    /// ':.!:.:/ }:.:.:.':.:.:.:':.:. i:.:.lゝ\
    ヾ\ハ〃ゝ        i:.:!/:.rl:i:.:.:.:.:,':.:.:∧:.:l       そして、実際のところ、
     i:.:.:.:.人  ―-ァ    l:.:':.:,:il l:.:.:.:/i:.:イ/ ヽ!      この印可はなんなのかというと、
     !:.,:..:.:.:.:.ト  ` ー    /l:.:.:/!ハl:.:.:/< ̄`:.、      端的に言えば、
     !ハ:.:.:.:.:i:::::`...、   イヽ !:./  l:./::::::::::::::::::::ヽ
       ヽ:.:.:',ヽ:、::::::T::::::ヾ 、>!'   ∧::::::::::::::::::::::::::',        「義理許し」
        ヽヘ ヾ\:! ヾ`フ:.:.:.,'   /::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ
           `ヽ  `  {:.:.: i  i:::::::::,、::::::::::::::::::::::::::ヽ    だったと思われるんだ。
                   ',:.:.l___l::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::.    もっと言えば、「家光の快癒祝い」として
                 ヾ〃〃l:::::::::::::::丶:::::::::::::::::::::    出されたんじゃないかな、ということだね。
                    l:ミ:ミ:ミ:l::::::::::::::::::丶:::::::::::::::::::
                    l〃〃l::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::
                    } ̄ ̄:::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::
                 {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::
                     ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::
                   \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::



430やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:12:11 ID:wK+ZuHSZ
             _........-――.--..、_              実際のところ、家光が、
         ,...:.:.:.´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`ー.、          印可を受けるに相応しい腕前だったかと言うと、
        /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:.、        正直、微妙なんだよね。
        /:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ      
     /:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:./:.:/:.:i:.:.:.:.:.:.i',:.:.:.:. i:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',       というのは、この後も
    ./:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.ハ:.l:.:.:.:.:.:.:l ',:.:.:.:.l:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.      家光から宗矩に対する兵法上の下問や
    i:.:.:.:i:.:.:.:.,:.:.:.:.:.l:.:.! !:.',:.:.:.:.:.:.l ',:.:.:.:!: l:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:ゝ     不満は相次いでいて、その文章から見ても、
    l:.:.:.!:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.!‐l―!-!‐':.:.:.:.:!-‐,―!‐l‐-i:.:.:.:i:.l:.:.lヾ、   とてもじゃないけど、新陰流を修めたように読めないからなんだ。
    l:.:.:!:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:ハ:.l  ヾ! ',:.',:.:.:.!  ',:.:!N.!:.:l:.:.:.:.l:.:l:.:.l  \  (ただ、技法そのものは一通り教授されたものと思われる)
    l:.:.:!:.:.:.:.: !:.:. ,'ィオテミ斥 ',:.',:.:.',ィテ≠ミx、!:.:.:.:.l:.l:',:.:l    
    l:.:.:.:.:.:.:.:.:l ≪  し':ハ  ヾヽ:.', ん心 ≫:.:.:i:.l:.!:.',:.l      この辺りについては、
    l:.:.:.:.:.:.:.:rz:.:.i  .弋zソ    ヾ!弋zソ i i`):.!:.l:l:.:.l',:l     後に十兵衛が自著「月之抄」で
    /:.:.:.:.:.:.:.:{ ',:.', 、、     ,   丶 、、 .!/,.':!':.:!':.:.:l ':!    
   ./:.:,イ:.i:.:.:.:.ゝ、ゝ',               从,ィ:.:.:.:i:.i:.l        『主人ト子ト徳ト深キ執念ノ人ト、
  // .l:.:',:.',:.:.:i: ',¨ヽ     ‘ '     ,.イ:!/,':.:i:.:.i:.!:.l         是四ツニハ不残可伝者也』
  /'   l:.:.ハ ',:.:.',: ',:.:.',.>      ,..イ:./:. //:.:.,l:.:.!:ハ',     
     l:.:ハ:.',:.:.',: ',:.:.', i  ` ー .i〃〃//イ:./l:/l:'  \     と宗矩が語った、と記述している通り、
     .!'  .ヾ\lヾ',:.:.',.}     l/ /'  /' .}/ .}' !       「主人」である家光は、腕前とは関係なく
          `  ',:.:','       ゝ..._____'           印可を与える人に含まれていた、ということなんだろうね。
       ,.-‐‐┬、´ ヽ',          ,ヽ ̄`ヽ       
      /::::::::::::::! ) -‐ヽ‐ 、    `´ ̄ ζ::::::::::::',         ただ、それでも、仕えて九年経ってやっと印可を
     .{:::::::::::、:::ヽゝ         ___ )::::〃::::::i       与えたわけだから、いずれ与えるにせよ、
      !::::::::::::ヽ::::ゝゝー――‐‐ '´   `',:ヽ:::::::::l       宗矩なりの基準があっただろうと思われるんだ。
      . i、::::::::::::i::::::',_          _ ,.',:::',::::::::',       そうでもなければ、前にも書いた通り、元和八年に
        }:`:::::::::::!:::::::::: ̄`::::ー―‐': ̄::::::::::::::::}:::::::: ',      「印可をよこせ」と言われた時、普通に渡していただろうしね。
        i  ,.-‐‐-、,-..、::::::::::::::::::::::::::_,..---、i:::::::::::ヽ     



431やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:15:18 ID:wK+ZuHSZ
 なお、その意味で家光と対照を為していると思われるのは、
宗矩の大名弟子のうち、「双璧」と称された鍋島紀伊守元茂であろうと思われる。

 前にも軽く触れたが、元和四年(1618)、17歳で目録を与えられた元茂は、
その後、寛永四年(1627)、「兵法者以思無邪為本」と題した論を宗矩に献じている。

       从火乂YハYY从マミシノ  ト、=彡  
      乂从八八乂从仆爪〈く{{从リ小从イ 
      爻八乂乂爻'⌒⌒``⌒`ヾ}ソ'⌒`V     『ひそかに意ふに、
      爻从乂八ミ             }.       兵は思無邪を以って本となす。
      スrrヘYハミ             {       而して機に臨み変に応ずるに…(※)』
      イ{{⌒ヾ{ミ、 -‐=‐- ニ二, , {ノ,斗rz!.   
      ノ{{V(し个   ーfモテラッ'' ノ rZfテア/      ※ 結構長いので略しますが、
       八ヽ      、_`,,__´   〈   .i       岩波文庫「兵法家伝書」に全文が載ってます。
      イ介ー}            〉  ,′    
        ((ノノ ト、.         ´イ   /
      ,-rf爪∨  \    =ニこア /
  __, -‐く  八  \   \      /              /
`V厂\.  \  \   >ー≧ー‐ァ〈V⌒>くこ≧ニ==―-<
_ノ`V⌒\   \  ` <二三二ニ彡' 〉}⌒>厂\{<⌒ヽ   V. /
  .八   )、   \       / }厂 /  /   \ノ    V
}}V 个ーく≦二>、 ` ー-   /  / /  /      人`丶、 {
V ∧}}リ }リ}リ}リ} //≧=‐- イ.  / イ  /     /  \ \
' ∧ ∨/小リ}リ//リ}リ}/^}ヽ {__// / `V       /     ∧ ∧

 この書は、宗矩からの教えを元茂が吸収し、
更にそれを自分なりに発展昇華させてみた論、と言える。



432やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:17:33 ID:wK+ZuHSZ
 そして、ここで示された兵法観に対し、宗矩は、

      / ̄ ̄\      |      
    / \  / \    人    『鍋島紀伊守、兵術を余に学ぶこと年有り。
    | (=) (=) |   ̄ .Y  ̄   その所の身に行ひ心に得るもの、書して以ってこれを示さる。
    |   (__人__)  |    |      内に在るものの外に発す。名有るときは則ち実を存す。
    .|   `⌒´   |          亦可ならずや。謹慎の工夫、勤めて忘れず、
    .|        .|           進みて己まざれば、その妙以って期すべき。
    丶       /          嗚呼、太守に非れば之を知らず、
      ヽ     ィ、   ∩て_    余に非ざれば之を証せず。思はざるべけんや』
  ;'⌒ヽ        ヽ、{三)(
 /              . `/  goodだっ!
 (  _/       l\、 ;′
  \, `ヽ.       i    ̄

 と別紙に書いており、端的に言えばベタ褒めしている。
事実、この「思無邪」は後に柳生家側の伝書にも度々記されるようになる。

 実際に「印可を受けた」とあるならば、このくらいの域に達していてこそ、と言えるだろう。



434やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:20:17 ID:wK+ZuHSZ
 ただ、この印可伝授を家光は大いに喜んだらしく、
三月二十一日、宗矩に弟子入りの誓紙(起請文)を自ら提出している。
また、その時、正宗の短刀も一緒に与えている。
(これは宗矩の死後に返上されている)

          ,.ィ'" ̄;.;.`ヽ、
         /;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ヘ                『新陰流兵法不残相伝、喜覚候。
         ,イ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.「 ̄ `' ー-.、          就其、従手字手裏剣
       / ル,;.;.;.,.r‐--、;.;r、;.:L_      ヽ、        奥者、無印而
        |  L_`"'、 __,., .l;llヘ!;f'  ,      ',        八幡大菩薩、摩利支尊天
       ∧ ヾ=,!´ ┬  .L/   !         ',       .不可他言者也
      ,'    ヽl      /ヘ   i!       ,  ',    
      ,'     i!`ヽ-´ ,イ   ,./ i l      /   ',     三月廿一日 家光
     i  !   iヘ  ̄ヾ レ'"´  l`ー    ト、   i               柳生又右衛門殿』
     !  l    l `ヽ、 ',、    l      l ヾ l 
     !  ヽ  /     ̄ヘ\___!      l   l
サラサラ ,'   _,./        `>-、_」    l  l   lヽ     …これでよし。
    i /  /       ,,. ''´  ヽ!   l  l     i    これで俺も、宗矩の弟子だな。
    !     ',     ,. '´      i!   l  !     l

 これまではあくまで将軍家として剣を学ぶ、という形であったが、
これにより、宗矩は秀忠、家光と、二人続けての将軍を弟子とすることになったのである。



435やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:22:40 ID:wK+ZuHSZ
             __
          ,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
       /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
      /;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
      ,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
      |;;;|      ノリ     ミ;;;|   
     _ゞ;! r─-- 、  ,rェ--- 、ミ;リ    ふふふ…これほど晴れやかな気分になったのは、
      !ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ   病になって以来、久しぶりだ。
     !(,ヘ!   ̄'"  |:::.`  ̄  ,ドリ
     ヾ、!      !;     ,レソ    宗矩の奴には、もっと他にも、色々してやりたいぜ。
       `|      ^'='^     ム'′   …そうだ!
       ,rト、  ー- ─-:  /|
    _../ i| \   ===   ,イ.:ト、
    /  i| ゙、\  ;   /リ.:;!:::\、_
       ゙!  ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
        ゙、      :::/::::::|::::::
    `ヽ、  ゙、     ./  .|  ,-、、



439やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:24:22 ID:wK+ZuHSZ
 そして、この誓紙提出の前日(三月二十日)、家光は宗矩にひとつの書状を与えている。

    『あの日、宗矩のところに
     家光からの手紙が届きました・・・ 』

          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
        /   /   /
        /   /   /
       /   /   /
       /   /   /
      /   /   /
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       |                    |
       |                    |
       /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
       /              /ヽ__//
     /   や ら な い か ?   /  /   /
     /              /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



443やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:26:08 ID:wK+ZuHSZ
   / ̄ ̄\    ) ;;;;)
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)
 |    (─)(─)  /;;/
. | u   (__人__)  l;;,´   …上様からの書でさえなければ、
  |     `∩_ノ)━・'   その場で焼き捨てるところであったが、
.  |     |_ノ      さて、なんと書いてあるのか…。
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |
 | \ /  _/

 そこには、このように書かれていた。

 『家のへいほうのこさずそうでんの処満足ニ候。
  いよいよ此期ながら、へいほうの儀能様頼入候、
  又、七郎儀のちのちまで、ぶさた有間敷候、
  たとへ又右衛門不有候共、七郎儀ぶさた有間敷候間、心勘可致者也。

  三月廿日 家光
  やぎゅう又右衛門 参』

 簡単にまとめれば、

 『柳生の新陰流を全て伝えてくれて満足している。
  これからもよろしく頼むぞ。
  あと、七郎(十兵衛)のことは心配するな。
  たとえお前が死んでも、ちゃんと気に掛けてやるから安心しろ』

 となる。



444やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:28:11 ID:wK+ZuHSZ

 『七郎儀のちのちまで、ぶさた有間敷候』

 『たとへ又右衛門不有候共、七郎儀ぶさた有間敷候間、心勘可致者也』


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ○)(○)
. |     (__人__)     …………。
  |     ` ⌒´ノ
.  |         }
.  ヽ        }
   ヽ     ノ    
   /    く   
   |     \
    |    |ヽ、二⌒)



445やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:31:06 ID:wK+ZuHSZ




     / ̄ ̄\
    /   _ノ  \
    |    ( ○)(○)   …………!
 .   | U   (__人__)
    |  U  |r┬-|  彡
 .   |     ` ⌒}   彡
 .   ヽ        }
     ヽ     ノ  へなへなへな。
     /     \
    / /\   / ̄\____l⌒l
     | |  \ /  ヽ \_____|
 Σ(⌒ノ   ゝ    \__)




446やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:31:57 ID:wK+ZuHSZ
          _______
        /          \
      __/             \
    /.            、    |     …よ、ようやく上様の勘気も解けたか…!
    |.         ,(⌒(○)ヽ    |    ほっとし過ぎて、腰が砕けそうになったわい…。
    l  lヽ      )>       /
   /    ヽ\   `(__,(○) / /
   |      \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  \
   |     |ヽ、二⌒)、          \


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ⌒)(⌒)
. |  u  (__人__)     なんだか久々に胃の辺りが軽くなってきたわい。
  |      |r┬|}    
  |      | | |}      …だが、当面はあの馬鹿者は柳生庄で謹慎させておくかの。
.  ヽ     `ニ}     これ以上、心労の種を増やされてはたまらぬ。
   ヽ     ノ
   /    く  
   |     \  
    |    |ヽ、二⌒)

 この家光からの書状…即ち、宗矩への信任と、
何より、十兵衛への勘気が解けた事を示す記述は、
宗矩の心労をかなり軽減したものと思われる。



448やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:34:16 ID:wK+ZuHSZ
 そして、ここで時は少し戻る。
家光に印可を与えた少し後、宗矩は酒井忠勝に呼びだされた。

       / : :.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}:.ヽ' ノ}、::{.| 
     〃、 :.:.:/:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.、\.:.:.:.:.:.:.ノ|゚´リ、/:ハ:l.| 
     /  ` -{‐ !ー{ー ‐!--ヽ'ヽ ̄二_,!´;}l.:!:::::}ハ! 
    ハ;`‐/ -|-:|ー:|ー-'{‐|:‐:ハ::|"!:.:.:.:}}イ:::}.}:::ソ:∧ 
     !:!{ :.:!.:.:.:|.:.:!:.:.:.{.:.:.:.:.l∧N レヽト、:.:.リ.|::::|´';:!l::::ハ      来たか、宗矩殿。
     !| !.::i!:::.i:ト、|ヽ:∧::::::ハニ|三,ニニ、.Y.:.:|::::|f. }l.l:::::ハ     本日は、そなたに申し渡すことがある。
     !! ',::ll:::::l:!ェニニミヽ::::∧ /´ヒzリノノ!.:.|::::|リ/:!l::::::::}. 
     { ∨:::i::l{《弋zj`  \::ヘ  ̄ ´ |!.:|::::|ノ::::!l::::::::ハ 
    `. 弋::l:::i` ̄     \!.     |!.:!::::!:::::f }:::::::::ハ 
.        レ!::∧         `    ||.:|::::|ヘ::l,,,!:::::::::::}, 
         {.!:::!∧     丶'      ,!|.:|::;:| '、;、:::::::::::::l 
       l.!:::l::{ \    ‐= ‐   ´ハル'´ .//‐、::::::::::! 
          {!:::l::| l´ >    ̄     / /  //  '::::::::::! 
          `ゞ、j {.    ≧ __ . < ./  //    \::::! 
             \ 、   \!lヽ、  ./  //        ヘ:| 
                ヽ!    !l`'、ヘ / ./'´          \ 
               }    !l   ´¨//-、__,...__      \ 

         / ̄ ̄\
       /    ー ー\
       |   ( -)(-)   な、何事でございましょうか…?
       | u    (__人__)  
         |     ` ⌒´ノ   (もしかして、今度は又十郎辺りが何かをやらかしたのか…?
         |         }    うう、また胃が…)
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.



450やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:36:31 ID:wK+ZuHSZ
                  __,..__
           _,.r-‐¬≡三゙:::::::::..`''..、_
          /./.r:::::::::::::::.\:::::::::::::::::...丶久f:}
         /.::;/..:::i.:::::;、:::::l;:::::..ヘ::::::::::::::::::::::i} l:::1
.        /..:::::;il.::::;l..:::::;;;l::::|;;i::::::..}::::ノ;::::::;ィ'^|} |:::|
       |ハ::::;;i|.:::;;|..:::::i;;ト;:lレl∧:ソY;;;;::l:::::::::/;li l::::l
.        ! {:;;l{:∧ハ.::::lv_.二ニ=‐|;;;;i::l:::/;;;;l}l.|;:::!    …柳生又右衛門宗矩。
         `!i{‐-_、ヘ:::}´ィr;z=ャュ |;;;;l:|´ };;;;;;l};l.li;::1   この度、上様の命により、
          l;;;i《屯ハ ヾゝ `¨´ " |;;;;l:| , |;;;;;ノ;;|.|l::::!   .そなたを従五位下・諸大夫へ任ずることと相成った。
.        l;;;l;l"  ,   `     |;;;;|:|_,ノ:ソ|;;;;l.|;i:::!
        |;;;;l;{  /          !;;;il:l |'" |;;;;l.|;;l::1    このこと、しかと承るが良い。
        |;;;il人 `ヽ       ノ;;;ill:l l  |;;;;l.l;;l:::|
        '" ̄¨ゝ マ三>   ,/"¨´ ト、. 1;;;l.l;;;l:::|
.            ヽ "  ,.ィ    / ヘ;;;;l.l;;;l::::!
              ` -<    /    ,/ミミゝ;:!,.
           _,=≡/ 人  /´   /ムホfヲ苑盆z、
         _,xl盆fホ/  /`  /∧   /      ̄`ヽホミz、_
        ,xタ壬シ'¨く_  ヽ.//タ ゝv´   /    f ´     }


         / ̄ ̄\
       /    - -
       |    ( ○)(○)
       |     (__人__)
         |     ` ⌒´ノ
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.



452やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:38:42 ID:wK+ZuHSZ
         / ̄ ̄\
       /   _ノ ヽ_
       |   ( ○)(○)
       | u   (__人__)   さ、酒井様…今、なんと…?
         |     .`⌒´ノ
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.


      ヽ:::.. \  \  ! .::::|:::.. ::...  :::::::::|       ::| l -‐ 、  ',  |::::..
        \::.. \:::..\|:.:::::!:::::.\:::..:::::::| !        ::| {_    ヽ l  |:::::::..ヽ
::.       \ \:::..>‐-|::::::|\::::::.ヽ::::::::!:|       ::|  ヽ  l !  !::::::::::.. \
::::..       \ヽ xく::::.\|!:::::l  ヽ::.:!::ト :::ハ|       ::|   }   /  |:::::::::::::.. ::::::...      聞こえなかったか?
:ヘ::::..   ::.ヽ Ⅹ\ >-j|/  , }∧:! }/ |       ::|    !  /   ;::::::::::::::..\:::::::..     おぬしに官位が下されたのだよ。
::::.ヽ:::::..  ::.\ \ヽ `、    ,./    | /   !       :|:|   ヽ    /.::::::::::::::::::::..\::::::
:::::::: \::::.  ::.、:ヽ \ ヽ. _//        |       :|::!     ,.へ:::::::::::::: ',:::::::::::..\::    従五位下、諸大夫だ。
\:::::::. \::::::::.ヽ::.\    j , '           |     :: :::|!|       |   ヽ::::::::::i::::、:::::::::::::::::   よかったな。
::::|ヽ::::::::::{\:::::::.\| \ '´           |     : ::.:::| |       |   ',::::::::|::::.ヽ::::::::::::::
:: l  ヽ:::: l  \:::::::.\                !:|   :l:.::::::::| |       !    ;:::::::|!::::::..\::::::::
::::i   `、:|    \r ト、\           |!|   :|::::::::::! |        ¦:::::!ヽ:::::::::..\::
\!   }:'      | `\          | !::   :|:::::::::i !         !::::::|  ',::::::::::::::::
  \  !'        !              i|::.....:::|:::::::::| |         |::::::|   !:ト、::::::::::
      /         |   ,.      ,  | |::::::::::::!:::::::::! |         |::::::|   !:| ヽ:::::
             └ -‐ ヽ    /   ! !:::::::::::l::::/  |    , '    |::!:|  l:i   \
                  └‐ <_     | |:::::::::_|!'     |  /     |::l::!  ',t
                    ヽ    ´ ̄      /l::.`ヽ.     |:::::!:|   ヾ、
                        ',            /   !:::::::. \   !::::|::!    \



453やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:40:10 ID:wK+ZuHSZ
         / ̄ ̄\
       /    \  /
       |    ( ○)(○)
       | u   (__人__)     さ、酒井様!
         |      |r┬-|     それはまことでございますか…!?
         |       `ー'ノ     まことに、まことに、それがしが諸大夫に…!?
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.


        _rf´ ̄ ̄`´ ̄ ̄:ヽ
       /: : : : : : : : : : : : : : : :\
        /: : : : : ,' : : ; : : : 、: :ヽ: : : ヽ,
     /: : : ; : :,' : : : ! :!: : :l: l: :l 、: : : ',
     /:.:.:.:/:.;:.:l:.:.;:.:.;.l:.:l:.:.:.:l:.:l:.:l:.:!:.:.:.:.:}
    ,'.;:.:.:/:.:.l:.:l!:.:l:.:{:.l:.:l、:.:.:l:.:l!:.l:.!:、:.:.:.!
     {!:l::::l:::l::M;M=ュ`;l:::l llィMMl:l::::}:;:::}     ああ、本当だ。
    l人:::!::l:{ 《弋;ゾ `、l."弋;ソ》 }:::lハノ    この間の印可…あれがよほど喜ばれたようだな。
    `、 `||从 ´ ¨   `   ¨ '` l:リ´     .あれほど元気になられた上様は久しぶりだ。
.      ||:∧`           ,' ト、      感謝するぞ、宗矩殿。
      /||:::::ヘ    ` '    ./:l!| ,》
.     《》|ハルト\.  ‐'ニ ‐ /イルl《》
     ノノ /;;;ノル;;;l`. 、__, ィヾ、:ヽ`、f }
.  ,r‐‐ii"‐―‐、{::{ ト、::;::||:::::;イ`}:}`ゞー―‐-、
 /::) ||     }:}.  `ー ‐'´ 〃/      (:::ヽ



454やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:41:55 ID:wK+ZuHSZ
゚ | ・ +o            o。 |  *。 |
 *o ゚ |+ | ・゚   / ̄ ̄\+・  o  |*
 o○+ |  |i  / ._ノ  ヽ、\  ゚| o ○。
・+     ・ l  |  (≡)(≡) |・|*゚ + |
゚ |i    | +   |::::: (__人__) ::::| |! .   |     …感無量でござる…!
o。!   |! ゚o   |   |r┬-|  .} |. * ゚ |      それがしが、諸大夫に…!!
  。*゚  l・    |   `ーlj´  } |o  ゚。・ ゚
 *o゚ |!     ヽ       / |*|○・ |o゚
。 | ・   o,. ‐- .._ヽ、.,__. /  !| ・ +゚ ||*|
* ゚  l| /    、  i  }  \   o.+ | ・
 |l + ゚o i     ` -、{! /_   \  ○・ |o゚
 o○ |  | ヽ.     ヾ´    ̄  `ヽ  *。
・| + ゚ o }  }                ヽ O。
 O。 |  | リ、  ..:::        ..   l 。
 o+ |!*。| / `ー::::       , ヘ:::::..  | *
 |・   | ゚・ |/   /  :::... ..   /:::/ | ::..... { |
    _|\∧∧∧MMMM∧∧∧/|_
    >                  <
  /\  ──┐| | \     ヽ|  |ヽ  ム ヒ | |
  /  \    /      /  | ̄| ̄ 月 ヒ | |
      \ _ノ    _/   / | ノ \ ノ L_い o o


           _..、.._ -─‐=¬==‐-、_
        /´::/:::::::::;,:::::: ::::::::::..、:::::.. `''、
        r::_r':::::::;:;/:::::r .:::::: ::::.. ヽ:ヾ:  丶
        〃:::::::;:;i〃::::.::/ .::li;::::.ヽ:::. \;::.  ト、
       /::;:::::;:i:;i/::::/.::;l .:::ll;::.:::. li;::::.、.. `,i::、.;. 丶
      l|;::i::::;:i:;l/::::/.:::;i} .:::l!::..|::. ト;:::. i;:... l;i:::i. 、::.ヽ
    .  {l:i:;:;::;i;lイ::::::;::::i::li .::::、:..li::/ヽ:::.ハ:::.ハi;::l:. ト、::`,
       l|:i:;:i:;i:l:li::::::i;:::l::|l、::::l|;::.}:! |ィーy' V:::::.i ヾ:}
   .   li;:l:i:;l:;l|l:::;::li;/V_ヽ::ハ;::::}〃ィ=≠=、Y;:::::l.  }:l   (おいおい、喜び過ぎだろ…。
       ヽl:i-、|l:::i;:ィ;≦iラヽ ヘ::::ヘ `ミ垈:タ |l:::i::|  リ    まあ、わからなくもないけどな)
   .    `|丶|l;::l;::iゞ:坐タ '′ 、ヘ. //// |ll:::l::| ´
     .   1ヒ: |li:;li::| ////    ! ゙丶  u llll:::|::i
        /ヾ_ll;i:;li::}       、 '   、  ハll:::|::|
       ∧{ l;|l;l:;l:ハ      _ ..-='..タ  /l ̄``゙
  .     ∧l l;:.ll;l:;li;i::;\    `ー ´   / il\
       l}:::i| l;:.=-‐'゙ ̄丶- 、..__    .イ .|  .\
      ハl::i| l;::i;:i:l:;夂少ハ    ̄` ´   |    ヘミlヽ
      |l:::i;| |;:i;;i:{:;i:;夕/  {        |     }堂盆z、



459やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:44:02 ID:wK+ZuHSZ
                                         さて、当時の旗本…というか、将軍家の御家人は、
                                        大きく分けて、三段階の序列があったんだ。

     /                                 ヽ       1 : 布衣以上
   /                                 ',       2 : 布衣以下御目見以上
   / /                /              ハ      3 : 御目見以下
.  / .:/ /       /        〃ヽ    i           |
 / .:/〃     __// //   //,′ ヽ ! i           |      大雑把に言えば、
..///7,′     ´「 7`ヽ/ .i  .://ム-‐‐‐',ハ|、           |     将軍に御目見できる1・2が旗本、
    !|   i     |/ |/j/! !:i .:.//'′     !ハ「     |        |     できない3は御家人、というところなんだけど、
    !|   i !    ィ斧ミメノノ | //  ,ィf云ミメ、」   |       !     このうち、1の「布衣以上」は、官位で言えば六位相当で、
   八  i i i i i j !ノ::::} ノ /    {ノ:::;::} Y|    ト、     i     殿中儀式の際、「布衣」と呼ばれる装束を纏い、
.   ハ. |ハj ヘ |仆乂::ノ  /     弋::::ソ ノ !     ! ハ       !    諸大名と同じく参加できたり、
     'j  ,ハ| :i                    ハ   j_ノ      ',    辞令があった場合も、将軍直々に申し渡されるなど、
       /  从   '              i !   / |  |   ハ    旗本にとって、とても栄誉ある立場だったんだよ。
      ./  / ヘ.  、   _,         从.  /    | !:ト、 ',
      /  /! i   \            .イ  i !/ヘ    i j i | ヽ    だからこそ、布衣を纏う事は、
     .厶イi: ! | i i ヽ.       .イ ノ ノノノ  | i  ! !ハハ!  )   何よりも面目を重んじる武士(旗本)たちにとって
      八!`ヽハハハヘi`ヽー 七升厶イ/j八八八ハj        憧れであり、目標でもあったんだ。
                     )ハ    /  {
             ,.-‐''て  _」        \  _」\          …そして、この時、
      .〃 ̄ ̄´ .ゝー‐''"´ ノ          ̄ノ   ゝ.、       宗矩が受けた「従五位下・諸大夫」という官位は、
       / {  /  〈  ー 、   _____       〈   ノハ      更にその上を行くものだったんだ。



460やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:47:04 ID:wK+ZuHSZ
                 __                        この従五位下・諸太夫というのはね、
           _ - ´: : : : : : : : : : :` ー 、                 あくまで幕府内のみの格付である布衣と違って、
        _ - ´: : : : : : : : : :\: : : : : : : \\                歴とした朝廷の官位であり、
      / : : : : : : : : : : : : : : :.:.ヽ: : : : : ::.:.:.:\\              公式に「○○守」という「守名乗り」を許されるなど、
     / : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.ヘ: :. : : : : : .:.:.ヽ.:\             まさしく旗本の中でも、一握りの存在…
   / : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:ト: : : . : : : : .:.:.ヽ:..ヽ            エリート中のエリートだけに許されるものだったんだ。
  / : : ,: : : : : : : : :.i: : : : : : : : : : :.:.:.:!\: : ヽ: : . :.:.:.:.ヘ:.:ヽ           (ただし、自称なら○○守を名乗る人間は大勢いた)
  /. : :/ : : : : : : : : :l: : : : : : : : : : :.:.,':|  \.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.ヽ
  !. :./: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : ,'.:.!    \:ヽ : :.、:.:.:!:.:.:.ヽ          実際、大半の大名も従五位下が殆どだから、
 l: . .!. : : . : : . : : : :.!: : : : : : : : : : :,':./   _ゝ‐-: :|、:.!:.:.:.:.ヽ         官位だけなら一藩の主と同格、というわけだからね。
 !. ..l. : . : : : : : : : : :|: : : : : : : : :l: イ;.!, -'"´    ト:.:.:!:l:..|:.:.:.:.:.:!         そりゃあ宗矩も嬉しかっただろうね。
. !. . |: : : : : : : : : : : :ト; : : : : : : :.! l !イ       !ヽ |.!/:.:.:.:.:.:.:l
| : !: : : : : : :',: : : :, x-─ :.:...:.:l!.| レ    彡≠、k_ヾ:..r-、.:.:.:.:.!         そして、これが与えられたのは、
. !: . .! : : : ヘ: : ,x '´: : ト、ヽ . :.:.:!レ    ー斗匕て',ラ゙:.:.:.:!., ヽ.:.:.:}        タイミング的に考えて、おそらく、病み上がり直後に
. l. . :.',: : : : :.X: :.ヘ-、:.::fヽ \_,'     "ヘっ_..::.ノ.! :.:.:.:k' /:.:.:.i         家光に印可を与えたことが効いていると思われるんだ。
 !. : : ',: ヽ:.´.:ヽ、:.ヘ xz≠ミk           ゝ- ´ ! :.:.:.:.Y.:.:.:...ヘ
 l. : : : ヽ: ヽ、:.\X〈!ら::..:;.ぅ           |:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.|.:ヽ        体力が落ちて、気持ちが弱っていた時に優しくされると、
  ',. : : : :.` -`_t xz、 ヘヒr- ´    、        |. :.:.:.:.:.!.:.:.:.:ト、.:ヽ      普段より余計に嬉しく感じる…家光からすれば、
  l : : : : : : :.:..iヘしヽ           ,     ,.l :./:l./:.ィ:ハ.}  ー`      そう感じたからこその大盤振る舞いだったと思うよ。
   ', : : : ヽ :.:.:.ヽ ニ >       ー "´     イi:.////ソ リ         仮に、十兵衛が致仕した直後くらいに出していたとしたら
   i; : : : :.ヽ: .:.:.::.:.:.:..:.:.ヽ、 _           / リ/iイ'             とてもここまでの効果が出なかっただろうしね。
    }: : :ト: :、ヽ:.:\.:.:.:.:..:.:.:.:.、ニ ― t - '   │
    | : :.ヽヽ:.ー 、_ヽ_Zー‐ ̄ー` i        ' ,                そういう意味では、
    l: ハ:トヘ  ̄          ;;A;;;;'  〆'" ̄ '''''`ヽ            宗矩がこのタイミングで印可を与えたのは、
   // ゙ー            /{:{ //:::::::::::::::::::::::::::::::、          「最高の機に打ち込んだ」と言って
                 /::{'l :レ'"/::::::::::::::::::::::::::::::__li         いいものだったと思うよ。
               ,/j::::::{'l レ'"::::::::::::::::::::::::/::::;;;''''::::::`ヽ、      まさしく「機を見るに敏」とはこのことだね。
              ,/:::::/::::::;;ル''"::::::::::::::::::::::::/'':::::::::::ァ‐ヽ::::::::::::`ヽ.   大したものだよ。くっくっ。
        ァ''":::::::::/::://::::::::::::::::::::/rー-、::::::::{ ∂ )::::::::::::::::::::::::::::::')、  (まあ、流石に病に陥るところまで見越していたとは思えませんが…)



462やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:50:13 ID:wK+ZuHSZ
              ,. -──¬ー、-- -- 、
           /厂:::: ':::::::,::::`ト、:::: 、:` 丶
           /;--:::/::::::::::、:::::: l::::::: ヽ:::ヽ:: \
         /::::´::::::/::::,::::::|l::::l::i::::: l::::::ヾ:::\::',:`:ヽ
     /´ヽ/:::::´::::::/::::::|:::: |l:::l::ハ:::: li::::::::ヾ::゙::,:::::::`, ト、
     ´::::::〃:`丶::/::::::: |:::: |l`y l、;:ヽ::::::l};:::ハ::`ト、:::、:ヽ
   /厂:::/イ:ヾ:::::::イ::::i::: |l::: |.lL'-ヾ;;;::`:::::!ヽ;:::l:::::iト:::ド::`,   …さて、これで守名乗りを許されるようになったわけだが
   |:〆::/:ハ|;;:::::\/-、l:::: |l::::: ィ勹Tヾ ヾ;:`:i-‐ヾl::::l|::;i`ヾ:l  どの名前が良いか、希望はあるか?
   |:!::;::ト::l l;l|::代:::l -' l:::: ト、::lゞユソ   ヾィTjlヾ小:|l::::!  l:l
   |i:::〃;:l l;;l|:{|::ミ;! { !:::: i ヾ!        ! `-´l'l|::::|i:::!  リ   将軍家由来の武蔵守・三河守や
   |:::li';::::l l;;;;l|;ヾ;;`、__ l::::::il        丶 ヾ !;;::::小;| ´   国持大名の固有官位は難しいが、
   |:::|l;:::::l l;;;;;/ミ::::;;ヽ、 !;:: }il         ′ ';;;,:::l::| !     それ以外なら比較的融通は効くぞ。
   |:::|ヾ:::l l;;;;/ハlト:::::::|  `゙     , =ァ /;;/!:::l:;|
   l|::|:::::::l l:/;少;j};;ゞ/          ̄  ′   `゙
  j}::::|,::::::l li´;;;;;;'|!;;/      ` 、     イ
  イ;::::,!`::::l |!;_√ ー--、      ` ー ´
 ´::::;;ハヽソ        \     /
/:::,´_,-ーヘ         ヘ,   | \
|l;/iミミミミミ\     /ミj\ \ \

 ちなみに、「○○守」の「○○」には国名(紀伊守、越後守など)が入るが、
これは当人の希望が比較的通ったという。
なので、同名の守名乗りをする人間が複数いるのも別に珍しくもなかった。



463やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:51:55 ID:wK+ZuHSZ
         / ̄ ̄\
       /    \ /\
       |    ( ●)(●)    …ははっ。
       |     (__人__)    ならば、それがしが得たい名乗りは、ただ一つでございます。
         |     ` ⌒´ノ
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.


         / ̄ ̄\
       /    ⌒ ⌒
       |    ( ⌒)(⌒)
       |     (__人__)    それは……
         |     ` ⌒´ノ   
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.



465やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:53:17 ID:wK+ZuHSZ
 そして、寛永六年(1629)三月十六日。
江戸城中──

    〃                 i,
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
    !  :l      ,リ|}    |. }
.   {.   |          ′    | }
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
    !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|    柳生又右衛門宗矩、
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|   お前を従五位下、諸大夫に任ずる!
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ
.    }.iーi       ^ r'    ,'
     !| ヽ.   ー===-   /
.   /}   \    ー‐   ,イ
 __/ ∥  .  ヽ、_!__/:::|\



         /⌒`"⌒ヽ、
        /,, / ̄ ̄ ̄\
        /,//::       \      ははっ!
      ;/⌒'":::..        |⌒ヽ
     /  /、:::::...       |ヽ_ \
   __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒  )
 ━━━`ー──ゝィソノ-ヾy_ノー─━━



466やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:54:19 ID:wK+ZuHSZ
             __
          ,.-''";;;;;;;;;;``'ヽ、
       /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
      /;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
      ,!;;;!゙`''~^~ァrr-'゙`'´''ラヘ;;;!
      |;;;|      ノリ     ミ;;;|
     _ゞ;! r─-- 、  ,rェ--- 、ミ;リ
      !ヘl;|. ぐ世!゙`` ,ィ '"世ン 「ヽ    そして、これ以降、お前の名乗りは──
     !(,ヘ!   ̄'"  |:::.`  ̄  ,ドリ
     ヾ、!      !;     ,レソ
       `|      ^'='^     ム'′
       ,rト、  ー- ─-:  /|
    _../ i| \   ===   ,イ.:ト、
    /  i| ゙、\  ;   /リ.:;!:::\、_
       ゙!  ゙、 `ー─''゙:::;:'::::|::::::::::\
        ゙、      :::/::::::|::::::
    `ヽ、  ゙、     ./  .|  ,-、、



467やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:55:18 ID:wK+ZuHSZ
 





 こうして、従五位下を叙任した宗矩は、この日を以って「守名乗り」を許されるようになった。

 そして、この時、宗矩は、後の世までそう呼ばれる名を受けることになる。
即ち──





 



468やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:56:49 ID:wK+ZuHSZ

           ,__ , _ 、           _, .._ 、
        _....j|lllll_|lllll_|lョ__      _j|lll|l|llll|:ョ 、
    __uョllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll亡uョllllllllllllllllllllllllョllllllllllllllllョョu_
  _ullllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllF]lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllョ_
,,,ョlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll〔ョlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllL_
 ̄ ̄ ̄’ ̄ ̄lll ̄ ̄”'lテ ̄"匸 二 ̄""'lllll_ ̄lllll"、lllll" ̄_]ll厂゙゙"ア''llllllll'、
         ゙゙ゞlll_ _____llll′"lllllL_ `゙lllllj リlr 'lllll!_ョll厂 __llll广
          __;]lllllテllll′    ゙゙''lllllョj ]lllllョェ__,三ニ_jllll广′
         ulll广    ゙lllll       ´~~~~`lllll~~゙lllllニ
                            ~~   ゙゙

                 / ̄ ̄\
               / - - \
               |  (●)(●) |
              . |.  (__人__)  |
                |   `⌒´  .|
              .  |.       |
              .  ヽ      /
                 ヽ     ノ
                 /     ヽ


            ── 「柳生但馬守」と ──

 



474やる夫で学ぶ柳生一族(その24)09/06/28 23:59:44 ID:wK+ZuHSZ
  \ヽ, ,、
   `''|/ノ
    .|
_   |
\`ヽ、|
 \, V"
   `L,,_
    |ヽ、) ,、
   /  ヽYノ
  / r''ヽ、.|
  | `ー-ヽ|ヮ
  |    `|
  |.     |
  ヽ、   |
   / ̄ ̄\
 /  _ノ ヽ_ \
 |  (≡)(≡) l
. |   (__人__) .|
  |   ` ⌒´  |
.  |        }
.  ヽ       }
   ヽ     ノ

┼ヽ  -|r‐、. レ |
d⌒) ./| _ノ  __ノ

【やる夫で学ぶ柳生一族(その24):「柳生但馬守宗矩の巻」】 完



関連記事
[ 2018/03/07 04:00 ] やる夫で学ぶ柳生一族 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する